メリーさんを撃退した男

プルルル…ガチャ

「もしもし私メリーさん。今あなたの町に居るの」


それは突然かかってきた一本の電話であった。

この春から独り暮らしを始めて昨日電話回線が繋がりアダルトサイト見放題だぜヒャッホォー!

そんな昨夜のテンションは欠片も残ってないくらい俺は今絶望していた。


「これってやっぱりあれだよな?」


そう昔から在る都市伝説『メリーさんのひつ…』もとい、『メリーさん』である。

回数を追う毎に近づくメリーさん、そして最後の電話で『貴方の後ろに居るの』で終わる恐怖のアレだ。


プルルル…ガチャ

「もしもし私メリーさん。今あなたの地区に居るの」


再び電話が掛かってきた。

出なければ良いと思うかもしれないが、この電話が鳴ると無意識に手が動き受話器を取ってしまうのだ。

この事から超常的な現象が起きてるのは間違いない。


プルルル…ガチャ

「もしもし私メリーさん。今あなたの家の前に居るの」


遂に家の前に来てしまったようだ。

嫌だ死にたくない、そうだこう言うときはネットで調べれば良いんだ!

折角昨日からネットが繋がるようになったんだ!

早速某巨大掲示板サイト『兄ちゃん寝る』にアクセスして書き込みをした。


プルルル…ガチャ

「もしもし私メリーさん。今あなたの部屋の前に居るの」


やばい!もう時間がない!誰か、誰か…

F5キーを名人の様に16連射して返事が付くのを期待する!

そして、1つの書き込みが表示された。


『ggrks』


終わった…


プルルル…ガチャ

「もしもし私メリーさん。今あなたの後ろに居るの」


体が勝手に振り向こうとする。

自分の人生が終わると言うのが何故か分かり全てがスローモーションになる。

唯一動くのは…口?!

俺はとっさに叫んだ!


「だるまさんが転んだ!」


そして、目の前に大きな口を開けて鋭い牙を突きだし襲い掛かる女が居た。メリーさんだ!

だがメリーさんは動かない、そして俺も体が全く動かない…

本来ならこのまま喰われて死ぬ筈なのだろうが振り返ったままメリーさんの呪いで動けない俺、だるまさんが転んだ!のせいで動かないメリーさん。

どちらが辛い姿勢かと考えれば結果は分かるだろう…





「これがワシが体験した物語の一部始終だ」


家に遊びに来ていた孫に自分の若い頃経験した話を聞かせる老人。

いつの間にか話を聞きながら寝てしまった孫の頭を撫でてやる。


「あらあら、お爺さん」


隣の部屋から妻が顔を覗かせる。

孫が寝入ったのを見てバスタオルを用意していたようだ。


「あの話をまた聞かせていたんですか?」

「あぁ、お前との出会いの話をな」


お爺さんは孫の手に袋に入った飴を握らせる。

ヴェルタース○リジナル

この子もまた特別な存在なのである。




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