思い出話
いつものメンバーとゆきあって、三人で飲んでいるうちにあいつの話になった。
「俺さあ」
言わない方がいいのかもしれないと悩んだが、やっぱりあいつのことで二人に隠し事はしたくない。ノートを取り出してカウンターに置く。
「あいつの日記あずかってるんだ」
「えっ」
二人とも驚いて俺を見た。それからそれぞれ示し合わせたように、同じタイミングで同じノートを取り出した。
「俺もあずかった」
「俺も」
「おまえが代わりに処分してくれ、読みたいなら読んでいいって言われて」
「そうそう」
日記をひらいて、細部の確認をする。鉛筆書きの字。改行、字数に到るまで、一言一句変わらなかった。
同じ内容が三冊。写したのか。
三人でしばらくあ然としたが、そのうちなんとなく笑えてきた。
「ははは」
「バカだなー」
「全部手書きだよこれ」
「暇人か」
入院生活の合間に仕込んだに違いない。悪戯のつもりだったのだろうか。それとも渡す相手を選びかねたのだろうか。思えば妙なやつだった。変なところで律儀でもあった。
並べたノートを眺めて笑いあいながら、ああもう一度四人で飲みたかったな、と思った。
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