< ――――――――乙壱>

 四月になると、パイロットを含む陸軍航空隊の関係者たちが、いつの間にか北の方に集められていた。

「隊長、加藤隊長!」

「どうした」

「隼が集まってきてますが」

「主力戦闘機だから当然だ」

「いくらなんでも、多くねえっすか」

「俺に聞くな」

 加藤率いる陸軍第六十四戦隊も、ここ青森に来ていた。

「四月なのに、さみーっす」

「それは、言うな……」

 ほぼ、本州の最北端。寒いに決まっている。

 中には樺太に移されてもっと寒い思いをしている部隊もあると聞いている。

 その割に、千島に行った話は、とんと聞かない。

「やっぱり、ロスケがクセエのか」

「あいつらったら、いつも酒のんでますから」

「そうじゃねえ」

 きな臭い、である。

 詳しくは聞いてないが、海軍の主力がごっそりいなくなったのいうのだ。

「噂がほんとうなら、さもありなんだな」

 それはそうと、満州でソ連と小競り合いが始まっていることが気がかりだ、とかとうは思う。毎日ラジオで報じられているのが、嫌でも耳に入っていた。

「どうなる事やら」

 加藤は、世界と繋がった空に目を向けた。

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