深夜のセールスマン
鐘辺完
深夜のセールスマン
「ごめんください」
午前一時頃にいきなりうちに誰かがきた。
「誰ですか。こんな時間に」
ドアのチェーンを付けたまま対応する。こんな時刻に来るんだからあやしいやつな可能性は高い。
「セールスにやってきました。いくらか便利な品を持ってきています。ご紹介させてください」
スーツを着た男だ。格好は無難であった。
「なんでこんな時間にくるんですか」
「わが社はこちらの惑星に販路をつくるために、ひとまず人気のない深夜にこうやって個別訪問……」
「惑星? こちらの惑星?」
もうかなり怪しい。
「あまり大きな声では言えませんが、ソーマカ星の商社、テンマカ社からやってきました。こちらの惑星ではまだ他の知的生命体との交流がないので……」
「ふざけんな。帰れ」
ドアごしに言い放った。
「そうですか。残念です……」
まったく、バカバカしい。
翌日。街は変わっていた。
飛ぶには小さすぎるはずの翼を背中につけて自在に空を飛ぶ人がいる。
自動車を小さくしてポケットに入れて持ち運んでいる人がいる。
あとになってわかったことだが、どうもソーマカ星のテンマカ社ってところのセールスマンから買ったらしい。テレビなんかでも紹介されていた。
さぞや高かったんだろうと思ったら、ちょっとした小遣いで買える値段だった。
こうしてテンマカ社は便利な商品が地球人の必需品になってから高く売りつけるのだった。
深夜のセールスマン 鐘辺完 @belphe506
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