第25話 悪知恵
「よーし、今日はこんなところだろう。お前ら特訓終了だ。飯にしようぜ」
時間はちょうど18時でホールに人が集まる。食事が入ったワゴン車が運ばれ、次々にぞろぞろと患者はワゴン車のところへ集まってくる。そう、この時間はみんな飯が待ち遠しくて一日中テレビを見てる患者さんも待望している。
「伊吹さーん」 「手塚さーん」「沖田さーん」
「「はーい」」
「熱いので気をつけてください」
食事のお盆が手渡される。3人のことを前が同時に呼ばれるのは今日が初めてだ。いつもの席に着く。カケルとヒロトも席に着いた。
いただきます。飯を食べる。病院食はカロリーバランスを考えて多少控えめな面もあるが、それにしてはうまい。
「カケルちゃん、明日も特訓するの〜?」
「あたぼうよ!俺は少しでも強くなりたいからな」
「今日は15戦もして流石に疲れちゃったよ〜。もうお互いのデッキの癖とか見えてきたよね」
ふと俺は思い出す。この前読んでいたワールドクリエイトの雑誌、通称クリエイト号という名前だが、その中に耳寄りな情報があったのだ。それは新しいパックの発売だ。
「お前ら、雑誌で見たんだが、明日は新しいパックが発売されるらしいぜ」
「それまじかよちょっとその雑誌見せてくれよ」
「ちょっと待ってろ」
俺はホールを出て、テレビが置いてある向かいのスペースにある棚からワールドクリエイトの雑誌を取り出す。そしてホールへと戻り、机の上に雑誌を置く。
「ほうほうこれが新しいパックか」
カケルは飯を食いながら、雑誌をさらっと見る。新しいパックのページの一覧にはパックの中に入ってるカードの情報も記載されてる。ハガキの抽選のコーナーのページには、ゲームやグッズ商品はもちろんワールドクリエイトのパック情報も記載されていて、そこにはパック24枚入ってるケースを5箱分50名抽選で当たるようだ。
「5箱か、すげーな。よぅし俺様は決めたぞ。こいつに応募して5箱ゲットしようぜ」
「ちょっとちょっとカケルちゃーん、50人なんて当たりっこないよ。それよりもどうやって出すつもりなのかな?ここから出ることもできないしねぇ」
「おう、完全に忘れてたぜ。・・・お袋に頼むか?」
「それよりもさいいこと思いついたよ」
ヒロトはちょっと悪そうな顔をしてちょっとおいでおいでとして3人の顔が近くに集まる。
「今さ、お母さんには僕たちはさ、毎日お菓子を売店で買うお金を親に出してもらってるじゃんか。だからさ〜、お菓子を買うお金をさ、全部パックを買うお金にあてたらどう?なかなかいいアイデアでしょ」
「お前、顔に似合わず人道なこと考えるよな…」
「俺もちょっと驚いたぜ。だが悪くはないな。お菓子を我慢しなければならないのは悔やまれるがそれでパックが買えるなら俺も乗ったぜ。その意見」
「それでねそれでね、僕は既にそのことをお母さんに話したらオッケーもらえたよ!」
「おいおい、マジかよ。じゃあ俺様もお袋に頼んでみるとするか」
だいたい支給されるお金が5000円前後だから3人合わせて15000円だね、これでわざわざハガキに応募しなくても5箱に値する量のパックはもらえるんだよ。
「よし、俺も母さんに話してみるぜ。俺はこのゲームに賭けてみたいんだ。もっと強くなって新しい世界を見てみたいからな」
「ああ、俺様も同感だぜ」
「よぅし、じゃあ2人ともお菓子は我慢しなければならないけどそこんところはよろしくね〜うんうん、水で我慢しようか。一応お茶もあるからね〜安心安心」
「ここのお茶はな…ちょっと味がキツイぜ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます