第14話 沖田ヒロト


SST、通称(Social Skill Traning)が行われる7階に

伊吹ソウタに見送られながら向かった。


SSTとは人が他の人と関わるのに必要な技術やスキルを身につけるトレーニングの

ことでやることといえば、日常生活の一場面において、どんな対応をすればいいか、

どんなことに気をつければいいかを話し合い、意見を出し合う場でもある。

僕、沖田ヒロトはここで知り合った手塚カケルとともに向かう。


僕とカケルちゃんはあって日もまだ浅いけど、ワールドクリエイトのデッキを

持ち合わせているところで勇気を出してみた。

人に声をかけるのはどちらかと言えば苦手なのかどうなのかは自覚は

ないけど、なんとなく声をかけてみるか〜みたいなノリで話してみたら

意気投合ってところである。SSTのソーシャルトレーニングで

見知らぬ人だけど声をかけるにはどうすればいいですか?という質問に対し


「そんなのは勢いとノリだー!」

と答えるカケルちゃん。マジうけた。

因みに今はカケルとソウタをちゃん付けしているが

気を許せる相手にはちゃん付け、それ以外はくんかさん付けで呼ぶ。

まあ、いきなりちゃん付けして気分害されたら嫌だしね。


7階の会議室にたどり着いた。

準備のために机を移動し、椅子を円状に並べる。

各々が席に座る。カケルちゃんも同席だ。


SST訓練でのテーマは日常生活におけるストレスとの付き合い方だ。

するとしょっぱなからいきなりカケルちゃんが手を挙げる。


「うんこを流すように人から何かを言われても水に流せばいいと思いまーす」


はーい、下品な回答きました〜。いやね、人に何か言われて流せずに

いるんだからボットん便所にアレを落とすみたいなノリで言うのは

やめて欲しいな〜となんだかんだ言ってもカケルちゃんは面白いな〜と

思う。


僕が手を挙げる。少なくとも担当の人にも流されたカケルちゃんよりかは

まともなことを言える自信はあるよ。でも下品さという観点では

上回るのは無理かな〜


「人に何か言われた時は意気消沈する前に、誰かに話して楽になるのが

いいと思いまーす」


「沖田さん。そうですね。誰かに何か言われて気分が下がる前に

誰かに相談することは大切ですね。意見ありがとうございます」


よーし、これで5ポイント〜。とポイント制は無いが、なんとなく自分が言った

意見に対しポイントをつけてみる。


参加した6人のうち僕とカケルちゃんを除いた4人も意見を言った。

実にどれも真面目な回答だったと思う。

どの人も普通に悩みや病気を抱えていて、どちらかというと気分がローな

人が多い中カケルちゃんはどうして一般病棟にいたかが未だ謎だった。


SSTの訓練が終わる。テーブルを片付けていつものようにファイルが手渡される。

そのファイルに今日の感想や自身を見つめての評価を5段階で記し担当の人に渡す。

それがSST訓練の醍醐味だ。


僕、沖田ヒロトがここへ来たのはSSTでの訓練で出たテーマとは若干違うが

人付き合いで悩みストレスがたまり鬱でここに来たのだ。


僕は中学に通っていた時はテニス部に入っていた。

だけど僕は下手くそでダブルスで迷惑ばかりかけた僕をメンバーが

邪魔者扱いするようになり、僕はテニス部に通うのが嫌になって

結果的に鬱症状になってしまったのだ。


「おーい、ヒロト。お前SSTのファイルを書き終わったか?」


「いや、まだだよ〜。カケルちゃんはどう?」


「俺は既に書き終わったぜ。お前も早くしろよ」


「うん、分かったよーじゃあね〜」



自室に戻る。部屋は3人部屋と違って1人部屋だ。

お風呂の予約を3時30分から入れていたのを今思いだし

お風呂へと石鹸、シャンプー、リンスを持って向かう。


湯船に浸かる。

ふぅ〜1日の気分が一気にとれるよ〜。お風呂の時間がたった30分ってのが

残念だな〜。まあ、それも仕方ないよね〜。

今みたいな軽いノリになったのはワールドクリエイトをやり始めたからである。

テニス部に入っていた時とは違い、タッグバトルがなくて人に責められることは

無いし、何より腕の方は悪くなかったからショップで対戦して

勝ち数をそれなりには稼げた。


お風呂場では音が他の部屋に聞こえないので歌をふふふんふーん拍子で

歌う。身体を洗って頭を洗い、風呂場のドアを開けると、後5分だ。

まずいまずい。悠長に歌なんか歌ってる場合じゃなかった。

急がないと…。


部屋から出て患者用の服に着替える。因みに食事の時も寝る時もこの服を着る。

毎日取り替えるのだ。


そして自室へと戻りベットに横になった。










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