2章 仲間とともに

第10話 仲間

「伊吹さん、今日で一般病棟の許可が出たので、そちらに移りますよ」


「はーい、今行きます」


部屋に持ち込んでた漫画や雑誌を戸棚に戻し、デッキを持って準備万端だ。

これで隔離の退屈な生活もおしまいだぜ。約1ヶ月の間、何もない部屋で

隔離された空間で過ごす日々は地獄だったが、今は体は鈍っているが

最初の時と比べ体の自由がきく。


今、隔離病棟のドアが開き、そこに待っている世界を見る。


目に映るのは何人かの患者と遊び道具が入ってる棚に

トレーニング用の乗馬マシンだった。

この1ヶ月の鈍った体を立て直すには乗馬マシンはちょうどいいな。

ここにもナースセンターがあって公衆電話がセンターの横に置いてある。


「伊吹さんのお部屋は221番の3人部屋になります」


「3人部屋ですか!?」


「では中へどうぞ」


221番の部屋には40前後の歳のおじさんともう一人の人は

この部屋には今は居なかった。

3人分の机とベットそしてしきりとなるカーテンがあった。

俺のベットは右端の所だ。


「ちなみにここでどれぐらい過ごせば退院できるのですか?」


「そうですね…伊吹さんの場合はおそらく躁状態での入院なので

あと1カ月くらい入院すれば退院できると思いますよ。

それは担当の主治医の先生に直接聞いてみてください」


「分かりました」


「では失礼します」と言って大林さんは部屋から去っていった。

窓から見える景色が隔離の時より鮮明で、今はここが自分の住んでる県内で

あると分かっただけでも安心した。


なんか暇だなぁ…部屋の外に出てみるか。

部屋から出て大型テレビがある空間の廊下を進んだ先に

テーブルが複数置かれた空間があった。


さっそくなので遊び道具がある棚を覗いてみる。

何もない場所ではないけど遊び相手がいないと何も出来ないなぁ…。

あるのはトランプ、UNO、卓球ラケットにピンポン球、ダーツゲームなどなど。

108ピースのパズルは1人でできなくも無いが、今はやる気にならない。

ハァーここで隔離と同じ1カ月かよ…。きついな…。


俺のターン。

ドロー!という声が聞こえて振り返ってみると、ワールドクリエイトで遊んでる

自分と同じくらいの歳の男の人が2人いた。


ここでもワールドクリエイトをやる人がいてよかったー。

ちょっくら様子を見させてもらうか。


公衆電話側の男がダメージ2でもう片方の男はダメージ4でお互いにレベル3を

出してる状況だ。場の様子を見る限りダメージ2側の方が有利そうに見えた。

だがダメージ4側の方はやけにTゾーンに溜まってるカードが多い。

もしかしたらこれは何かを狙ってるかも。


へへ、そろそろ俺の究極技を見せてやるぜ。

俺のターン!俺はレベル1を出し、効果発動!

場のレベル3のカードをデッキに戻し戻した枚数分ドローするぜ

3枚ドローだ。さらにエナジーカードを使い、レベル2、レベル3を出すぜ。

レベル3の効果発動!手札を5枚デッキに戻すことで

Tゾーンの表のサポートカードを全て使えるぜ!


おいおい、冗談だろ。攻撃回+1が3枚にパワー×2が2枚に

パワー+5000が4枚でパワー合計(5000+5000×4)×4で

パワー100000の4回攻撃じゃないか…

効果の都合一回しか使えない戦術だが、これはいくらなんでも強すぎる…。


「うわー僕の負けか〜悔しいなー」


「残念だったなヒロト」


「カケルくんは強いね。僕なんかじゃ相手にならないや…」


「や、やぁ」


うぅ…見知らぬ人に声をかけるのは苦手だなぁ…


「ん、俺たちに用か?どうした?」


「えーと、俺もワールドクリエイトやってるんだ」


「君もかい。よかったーこれでバトルできる仲間が増えたよ」


「お前なんて名前だ」


「伊吹相太だけど…」


「そうか、ソウタっていうのか俺は手塚カケル、この背の低いのは

沖田ヒロトだ」


「よろしくねソウタくん」


「ソウタくん、よろしくお願いします」


「ソウタよぉ、そんなに硬くなるなって。もっとラフな感じでいいんだぜ」


「そうか、ならよろしくな」


どうにか気の許せる仲間に巡り会えたというところか。

これでここでの日々は退屈せずにすみそうだ。










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