第7話 隔離の日々

昼12時になり部屋から出てきた。

ようやくいつもの飯にありつけるということだ。だが、いつも俺の向かいの席にいる

遠藤さんの姿が見当たらなかった。

あれ?遠藤さんがいないな…


「遠藤さんがいないんですけど、どうしたんですか?」


ナースの大林さんに尋ねる。


「大林さんならさっき一般病棟の方へ移ったよ」


「えー!?マジですか!?というかまだ一般病棟っていうのがあるの

聞いてないんですけど…」


「そうか、いつも昼に相手してくれる遠藤さんがいなくなって残念だよね」


全くその通りで昼部屋から出られる時間は遠藤さんとカードバトルをしていたから

暇じゃなかったけど、遠藤さんがいない昼時間は退屈な時間になる。

それが残念でたまらなかった。


あーあ、参ったなこりゃ。せっかくゲームのルールにも慣れてきて

勝敗も2勝2敗だったのに。キリのいいところで一般病棟の方に

移ってしまうとは…。


「俺はいつ一般病棟の方に移れるのですか?」


「そうですね…伊吹さんも落ち着いた状態が持続してますし

明後日くらいには移れると思いますよ」


「うーん、その間暇ですね」


「それじゃ、私とワールドクリエイトで対戦してみますか?」


「大林さんとですか!?デッキはもっといるのですか?」


「当然持ってますよ。では夕方の食事後に一戦しましょうか」


「ぜひお願いします!」


大林さんとまさかワールドクリエイトで対戦できるとは思わなかった。

どんなデッキを使ってくるのだろうか?

夜時間が待ち遠しい。

昼時間は昼食を済ませ、デッキの調整は枚数がジャスト40枚なので

当然できない。というよりもらったデッキの40枚しかカードが無いからだ。


「伊吹さん、採血するので腕をお願いします」


「注射は苦手です」


「まあ、注射得意な人も少ないやろうしねぇ」


「大林さんはどんなデッキ使うのですか?」


「対戦してからのお楽しみで」


「そうですか、ワクワクしますね」


そんなやり取りを終えて大林さんは部屋を出て行った。

この部屋で過ごした時間は約1カ月くらいだろうか…。

ようやくこの不自由な部屋とも明後日でおさらばだと思うと気分がいい。

せっかくだから歌でも歌ってみるか〜一曲ノリノリで歌ってみた。

暴れても叫んでも迷惑がかからないこの部屋だから

実にエクスタシーである。

歌を暇つぶしに歌っていたのは初めてでなく、今までで数回歌ってたことがあったが

1度だけナースが歌ってる最中に入ってきて恥ずかしい思いをしたことがあった。


時間は5時00分、この時は歌いながら雑誌を眺めていた。

俺もこんな料理ができればいいな〜と雑誌の料理レシピ

のページを眺めていて思った。


5時30分、俺は雑誌を読むのをやめ漫画を読むことにした。

ポピュラーな漫画は少なくて、ほとんどが昔の漫画ばかりで

その類のものを読んでいた。


6時00分、ちょうどに部屋のドアが開く。

机の上にはすでに食事とネームプレートの紙が置いてあるお盆がすでに

置かれていた。

献立のメニューは毎度違い、今日はラーメンとおつまみとバナナだった。


「伊吹さん、食べ終えたらやりますか」


「okです!お願いします!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る