第6話 夜時間

昼時間の外出タイムが終わりそれぞれ患者は各々の部屋に戻る。

普段なら長く感じる外出タイムは遠藤さんとのバトルの影響で短く感じられた。

あー暇だといつもの決まり文句。ここにきてしばらくの間は頭の回転具合が

悪かったが、遠藤さんとのバトルで鈍っていた頭も徐々に回転してきた。


そうだせっかくだから漫画を読む前にもらったデッキを眺めよう。

そしてデッキのカードを種類ごとに分類し、床に並べてみる。

そして一面に40枚のカードが並ぶ。

上一列バトルlv3、中段はlv2、下はlv1だ。


「お、楽しそうなことやってるね」


ナースさんがドアを開いてそう言った。

この人はいつもこの部屋にくる担当のナースの大林さんだ。


「そのカードは確かワールドクリエイトだよね。楽しそうやね」


「そうですね。遠藤さんとバトルした時は楽しかったです」


「そうかそうか、じゃあ検温しますね」


体温計を渡される。脇に挟んでいつものように体温を測るが37.0度を超えたことは

一度もない。36.4度だ。至って健康な身体である。ここにきた理由が分からない。

そう、入院前の1週間の記憶が無いからだ。


「伊吹さん、おつうじありました?」


「はい、さっきありました」


「そうですか、ありがとう」


ナースさんが部屋から出て行く。


記憶かぁ、俺の身に一体何があったんだろ?なんとかその時の出来事を思い出そうとするが、思い出せることは一週間前に暇つぶしに書店に行ったことや、そうそう

カードショップにも行ってたな。でも、その時の俺はカードゲームに興味があったが

ルールとかが分からないし、周りの友達にカードをやってる人がいなくて

カードに手を出すのはやめたのだった。

しかし、今こうやってカードゲームに手を出せるのはありがたいことだと思う。


lv1のカードはそれぞれ3枚ずつの計18枚にlv2が12枚でlv3が10枚か…。

なになに、このカードは攻撃時パワー+10000か高いな、おい。

こっちのカードが攻撃時場の表のサポートカード1枚につきパワー+7000か。

こっちのカードも場合によってはパワーが超高くなるな…。

退院したらこのカードゲームのパックでも買おうかな…だけどどのカードと

交換すればいいか分からないしなぁ…


デッキのカード1枚1枚を見て研究しているつもりだが、大雑把なことしか

分からない。


しっかし、遠藤さんみたいな歳をとった人がカードゲームをやってるなんて

意外だったな…。友達でカードゲームやってるやついないしなぁ。

やるならショップかな…?


時刻が18時になる。

大林さんがドアの鍵を開け、食事に呼びに来る。この時間がいつも待ち遠しい。

そしていつもの顔ぶれで食事をする。遠藤さんはいつも向かい側に座る。

普通食 18

これが俺の献立だ。正直18でなく20のほうがいいが贅沢は言えない。

ちなみに18と20では食事のカロリー量が違う。

一気に食べる。お茶を飲む。飯を食べたら歯を磨く。

歯ブラシは親が送ってくれたものを使ってる。

親もここにいさせることを承諾してるようだ。

最初の時はこの食事の部屋に出られず、これは一種の拷問かと

思う時もあったが、部屋から時間歯ブラシは指定されているが

出られるようになり、出られる前の時よりも気持ちは楽だった。


「伊吹くん、そういえばお前さん今いくつじゃ?」


「えっと今15です。中学3年です」


「そうかそうか若いのに大変じゃのう…」


今は学校が夏休み中だから単位の心配は恐らく無いだろうが…まあ、いつになったら

出られるかわからないからなんとも言えないが、 このままずっといるというのは

マジ勘弁してください。


就寝時間…。

デッキを窓際のところに置いてベットデッキ横になる。

お風呂は3日に一回ぐらいしか入れないのが

ここの不便なところの一つだ。 と言ってもこの空間が不自由すぎて

お風呂に入ることすら大したこと無いと感じるくらいだ。

この日々があとどれくらい続くのかという不安とともに

静かに眠りについた。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る