第2話 お誘い

「どうしました?大丈夫ですか?」


白い服の人はこちらを心配して声をかけてきた。


「あのここはどこですか?」


このよくわからない状況で聞きたいことはたくさんあったが

まず言いたいのはこの一言だった。


「ここは隔離病棟ですよ。伊吹さんは先日ここに運ばれてきたのですが

ここ数日の記憶はありますか?」


「いえ、無いです。それでここからいつ出られるのですか?」


「そうですね、伊吹さんの状態がしばらくの間落ち着いたらですね」


「ということは今すぐには出られないということですか」


「はい、そういうことですね。今食事をお持ちしますね」


ナースさんがこの部屋から一旦離れる。

どうやら俺は隔離病棟と呼ばれる場所にいて、しばらくの間はここで安静にしなければならないということだ。

こんな何も無い場所でずっといるというのは非常に苦痛なことこの上無い。


トントンとドアノブがする


「伊吹さんお食事です。どうぞ」


「有難うございます」


ご飯と味噌汁にミニオムレツと鮭の魚のセットの食事だった。

ずっと叫んでいて体力をかなり消耗しており一気に食事を食らい付いた。

病院食か、、、味は悪くない。というか病院にこんな場所があることを

今まで知らなかったよ。


「ごちそうさま」


「食器片付けますね」


「あのこの部屋から少しだけでも出られないですか?」


「今は無理ですね。すみません」


そう言ってナースさんは部屋から出て行った。

ドアの鍵がかかる音が聞こえる。

この退屈な時間をどうするか。

本もない、テレビもない。そもそも外に出られない。

何も無いただ時間だけが過ぎていく。

あるのは窓越しに見える時計のみだ。

早く出たいと刹那に願う。

食事は朝昼晩ナースさんが持ってきてくれて夜にはナースさんが

窓のカーテンをしめる。


そして1日の終わりは不安な夜だ。

いつになったら外に出られるだろうという不安で若干ストレスがたまる。


次の日そして次の日と時間が無情に過ぎてく中、部屋で暴れたり、

泣いたり色々あったが、ここで目覚めてから1週間が経ち

ようやくこの部屋から特定の時間のみ出ることができるようになった。


出られる時間は午前7時~9時 昼間12時~15時 夕方18時~19時だ。

部屋を出ると他の患者の人の姿が見えた。

ナースセンター越しの空間で机にイス、テレビとしかも持ち込み可能な本やマンガもあった。どのマンガを持って行こうか悩むな。というかこの世界にもテレビがあったのかーと感動する自分がいた。


他の患者は高齢者ばかりで、自分が場違いのようにも見えた。


「おお、君若いな。名前は何さんだい?」


「俺の名前は伊吹相太です」


「伊吹くんかい。若いのに珍しいね」


黒髪の老人で患者専用のパジャマ服の人で年は60~70といったところだ。

急に声をかけられてビックリしたが、何とか自己紹介も出来た。


「そうだ、君。ワールドクリエイトっていうカードゲームを知っているかい?」


「ワールドクリエイトですか?知らないです」


「そうか。知らないか…。ならワシと昼間このデッキで遊んでみないかい?」


「このゲームですか!?俺やり方全然分かんないですよ」


「いつもはねぇナースさんに相手してもらっとるんだが、丁度若い子がいるしね

一緒に遊びたいと思ったんじゃ。毎日やることが無くて暇だからのう」


「そうですか、じゃあ俺。そのカードゲームやってみますよ」


「おお、そうかそうか。なら昼間になったらやろうな」


「はい!」


朝のフリー時間が終わり部屋に戻る。

ワールドクリエイト…聞いたこと無いカードゲームだ。

カードゲーム自体今までやったことが無く、ルールも分からない。

だがこの何も無い病棟生活を何もせずただただ待つより、カードゲームの1つや2つ覚えて楽しめればいいなと思った。

この部屋に閉じ込められる間の時間が一番苦痛であったが、部屋から出られるようになり部屋にマンガを持ってこれるので、それでこの時間を乗り切れると思っていたが

1週間の間、クスリを飲む以外の動作がほとんど無い状況下を過ごしていたせいか

マンガを読む集中力さえ無かった。というよりマンガを読むと頭痛がして

まともに読むことができなかった。


あーあ、これじゃあマンガ持ってきた意味無いじゃん。


こうして朝と昼の間の時間は部屋から出られる前と同じ苦痛だった。











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