第5話
しまった、もしかして言うべきではないことを言ってしまったのではないか?頭のおかしな奴だと思われて当然だ。
「へ、へぇ〜、異世界ね。異世界……それは大変だったわね。あ、そうだ、そうそう、食事!食事を持ってきたの、ここに置いておくから食べてゆっくり休んでね、それじゃあ私は隣の部屋にいるから用があったら呼んでね、じゃあね」
表情が困惑から徐々に焦りに変わると、女性は一息でそう言い切り、そそくさと部屋を出て行ってしまった。弁明するタイミングを逃してしまった。どうしよう。
しかしわざわざ隣の部屋まで追って「冗談です」とでも言おうものなら、より一層変な奴だと思われかねない。ここはひとつお言葉に甘えて飯を食い、休ませてもらおう。体もどうも本調子じゃなさそうだ。なあに、誤解はのちのち解いていけばいいさ。
そうなれば飯だ、異世界で初めての飯はどんなものかな?見た目はかんぜんにパンとシチューじゃないか!もっとゲテモノみたいのが出てくると思ったので少し肩透かしだ。モンスターの丸焼きとか食べてみたかったなあ、少しだけ。
小声で「いただきます」と言い、手を合わせる。幼い頃からの習慣だ、異世界に来てもすぐに変わるもんじゃあない。
料理の味は……普通のパンとシチューでした。食事は特筆するようなことは何もなかった。
やることも無いし、再度寝ようかな?しかしあの女性は見知らぬ俺をこの家にどのくらい居させてくれるつもりなんだろうか?外に出される前にこの世界の常識を多少教えて貰いたいなあ。あとは稼ぎの問題がある。資格も何も無いのだ、こんなヒョロイ体で肉体労働とかやらされた日には死んでしまう。そもそも、異世界の価値観は俺に合うだろうか。ヤバいな、考えれば考えるほど不安になってくる。そうだ、この世界に来てから抗うつ剤を飲んでいないからじゃないだろうか。鬱の時は何か考えるべきではない、寝れるだけ寝よう。今が昼でも関係無い。努めて寝るのだ。おやすみ
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