第4話

眼が覚めると知らない部屋で寝ていた。天井は素人目にはコンクリートのように見えるし、どうも死後の世界というわけでは無いみたいだ。寝かされているベッドの上で上半身を起き上がらせて部屋を見渡してみる。小さいが綺麗な部屋だ、布団やシーツも清潔感がある。窓は無く、ドアが一つある。

どうしよう、ここで待つべきか、出て行くべきか。そもそも、ここは何処で、どういう状況なんだろうか。生きているということは、おそらく何者かに狼から救ってもらったのだろうけれど、詳しいことが分からない以上動くべきでは無いだろう。そうと決まればもう一眠り、おやすみなさい。

綺麗なベッドで安心してウトウトしていると、部屋のドアがガチャリと音を立てて開いた。俺は慌てて飛び起き、ドアの方に向き直る。そこには一人の女性がいた、年のほどは30くらいだろうか金髪でスラッとした印象の人だ。

「起きたんですね、良かった」

とりあえず言葉が通じることと、この世界にも人間(少なくとも外見は人間だ)がいることに安堵しつつ受け答える。

「ええ、お陰様で。助けていただいたみたいでありがとうございます」

「いえいえ、私としても助かりましたよ。あなたが囮になってくれたおかげで実狼の群れを魔法で掃討することが出来たんですから」

どうやら俺を追ってきた狼は実狼というらしい。それに、魔法と言ったぞ。この世界には魔法があるんだ!少しだけワクワクしてきた。

「めっそうもないです」

「それにしても、ろくな武器や防具も持たずにあんな所で何をしていたんですか?実狼の実を食べていたみたいですし」

実狼の実……?あの赤い木の実のことだろうか?分からないことは素直に聞くことにしよう。

「実狼の実、ですか?もしかして赤い色の実のことですかね。何か食べてはいけない理由でもあるんですか?」

すると彼女はいささか驚いたような顔をした。しまった、この辺りでは常識だったのかもしれない。

「実狼の実には毒があり、食べてしばらく経つと全身が麻痺して動けなくなります。また、実狼にだけ分かる独特の匂いを発生させるので、食べたら最後、容易に後をつけられてしまうんですよ。それを知らないってことは、この辺の人ではありませんね?何か訳ありですか?言ってくだされば多少のお力添えは出来るかもしれませんよ」

願ってもない提案だ、俺には生活のあてもない。ここは一つ真実を告げて頼らせてもらおう。

「実はですね……俺は異世界から来たんですよ」

そう言った瞬間、俺は空間がピシリと軋む音を幻聴した。

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