第2話

前回までのあらすじ:起きたらジャングルだった。


起きました。ムクリ。ジャングルでした。おやすみ。

整理だ。まずは状況を整理しよう。幻覚に異世界に行くと告げた、するとジャングルにいた。無理だ。おやすみだ。

そうだ、これ自体が幻覚って可能性は無いか?勇気を出して、目を開けて確認してみよう。ムクリ。すごいポリゴン数だ、これで幻覚だったら俺の頭は国宝級。明晰夢ってレベルでもねーぞこれ。やはり異世界!異世界に来てしまっている!!

ええ〜、急に異世界とか言われても困るんですが……なんの用意もしてないし、持ち物といえば部屋着のスウェットと保温するインナーぐらいだし。それに、俺は親に恩返しをするっていう現世での目標があったんだが。

いや。まあ、それらは一旦置いておこう、とりあえずこの異世界(仮)でサヴァイヴすることを考えようか。

すると気になるのはさっきの球体の台詞「君の存在をこの世界から消すのに100ポイント使うね」ってやつだな。

もしかしてこのポイントってチート能力とか貰えるポイントだったのでは?

で、俺はそれを世界から存在を消すのに使った?これってもの凄い無駄遣いっぽくないですか?いや、異世界に行った俺と、行かなかった俺の二人に分裂とかされたら気持ち悪くてしょうがないな、それ自体は良しとしよう。

さて、つまるところ当面の問題は、このジャングルを抜けて人里(そもそも人はいるのか?)にたどり着けるかどうかだな。

こういうのは暗くならないうちになるべく移動するに限るはずだ、今は何時ぐらいだろうか?日はもう傾きかけているな。うーん、異世界初日ハードモードだ。とりあえず、日の落ちる前に休めそうな場所を探す必要がありそうだ。


そこまで考えて初めて、俺は立ち上がり、服についた枯葉をはたくと、異世界で記念すべき第一歩目を踏み出したのだった。


道無き道を行くこと1時間後。とりあえずの指針として、遠くに見える山とは反対の方向にただガムシャラに進んでみたところ、運良く5畳くらいの広さの洞窟を見つけることが出来た。地面もベチャベチャの土がほとんどで傷ついたりは殆どしていない。完全にラッキーだ、主人公補正は我にあり。外は長袖のスウェットでは少し暑いぐらいで、保温するタイプのインナーは脱いでいたが、洞窟の中はヒンヤリと涼しく心地よく寝られそうだ。

ここまで危険な動物に遭遇しなかったことや、山あいに沈んで行く夕陽が美しくて俺は久方ぶりにテンションが上がっていて、なかなか眠れないかと思われた。しかし、夜の帳が下りて辺りが完璧に真っ暗になると気づかぬ間に寝てしまった。


そして真夜中、俺は洞窟に何かが侵入してくる足音でハッと目を覚ました。

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