第24話
俺は声を出さないように口を動かして聞いた。
「(だいじょうぶか?)」
れえは、じっと俺の口の動きと目を交互に見つめて必死にうんうんと頷く。
「おまえこそ、声、治るの」
「(なおる)」
「ほんとか…」
そう言うとれえはそのまま俯いてしまった。
深いため息みたいな吐息が聞こえて、俺がそのれえの表情を確かめようと身を屈めると、
れえの頬から伝った涙がきらきらと落ちた。
俺はたまらなくなった。
掠れた声でれえを呼んだ。
れえは賢明に怯えるような表情で俺を見上げた。
目が涙で真っ赤になっている。
「くにが、もし、でてこなかったら…」
「(ぜったいでるっていっただろ)」
「お前が、死んだら俺は…」
「(ころすな)」
「こんなことになるなら、くにともっと、ずっと、一緒にいればよかったんだって」
俺は、あまりにまっすぐな言葉に思わずれえを強く抱きしめていた。
はずみでそのまま部屋のスライド式の扉が閉まった。
ただ、れえの匂いだけが俺の鼻腔を通り抜けた。
「ん、ン、?くに」
「好きだ」
混乱しているようなれえの耳元で、ほぼ息だけみたいな掠れた声で言うとれえは大きく身体を震わせた。
「ごめん、本当は、ずっと好きだった、れえ」
「…く、に」
無理に抱きしめた腕の中で、懸命にれえが俺を見上げていた。
「おれも……す…」
そんなもう、ほぼ決定的なとこまで言って恥ずかしくなったのか、れえはそこで言葉を止めるとしばらく何も言えなくなった。それでも言えない代わりに、俺の腕をぎゅっとつかんできた。
ほぼほぼ隙だらけのれえに口を合わせることはいくらでも出来たけど、
俺は慎重に、大事に唇を寄せた。
口と口が触れ合う瞬間に弱弱しい声で
「ヤ、め、だめ、俺」と言ってれえが俺を手のひらで遮った。
それから「俺ほんとは心臓壊れそうなんだ、ずっと…」と言われると、拒否されているわけではないその言葉と状況がむしろ、もうとんでもなく俺の我慢した劣情を誘った。
そのまま、力弱い拒絶を強引に引き寄せて、口を寄せる。
それが触れ合う刹那、
バーンと勢いよく扉が開いた。
身を離す暇もなく、部屋中に怒声が響いた。
「こるぁッ!!国彦!」
マジこのタイミングでロミオさん…
泣きたい。
その姿を確かめている間にばいーんと頭はたかれた。
「礼の身体に火傷だと?痕残ったらどう責任とるつもりだ」
って俺に鬼のような形相で言ったと思ったら、いつものあまあまの声で「礼こっち来い。そんなやつの近くにいたらあぶないあぶない」
つってロミオさんはれえを引き寄せた。
でも、
止めてくれて助かった…想像以上にデレたれえが可愛すぎて
…可愛い…か
そうだ。
誰から見たってれえは可愛い
だけど俺は
こんなことれえに対して感じてはいけないんだと何度も思ってた。
のにな…
見た目の特徴や、その表向きのやんちゃな性格だけじゃない
内に秘めてる孤独と脆さ、強さ、全部が愛おしい。
俺はいまだに怒りがおさまらないロミオさんの目がそれた隙に、
れえの腕をひっぱって軽く触れるだけのキスをした。
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