第20話
「……れえ?」
「やっぱ、帰ったら嫌だ」
さっきまでのしっかりした口調と違う
どこか駄々こねる子供みたいな声で言われて、正直混乱した。
少し怒ったような強い瞳でじっと俺を見てる。
「ゲームとノートだろ、俺を信じろ」
「ちがう」
「ちがうって何」
「そうじゃない」
「あ?」
「まだ帰るな」
まて、落ち着け
これがロミオさんの言う甘えん坊病な
…凶悪すぎるだろ
「れえ心配するな。すぐロミオさんもくるし、大丈夫だ」
「ちがう!お前があいつのとこ帰るのが嫌だって……」
言葉の途中ではっとしたれえは、急いで口をつむいだけど
そのときには涙があふれていた
涙を見られたくないのか小さくうつむいて震えた。
「何、言ってるか……わかってんの、れえ」
「かわせんとこ、帰るんだろ」
星空と、やわらかいてのひら
抱きしめた震える身体
抱えた孤独と
背徳感
俺の中のれえとの愛おしいような思い出ぜんぶ
一瞬身体を駆け抜けていった
れえの手がかすかに俺の方に助けを求めるみたいにのびた気がした。
そんなの俺が勝手にそう理由づけただけかもしれない
だけどかんがえてる暇もないくらい俺の身体はすぐに動いていた
れえの身体を支えるようにれえを抱きしめた。
それでも最後の理性が、れえの肋骨に負担をかけないように必死に堪えさせた。
「体調悪くて不安になってるだけだ。大丈夫だから、泣くなよ」
「くに、…な、やっと、……かったんだ」
「れえ無茶すんな、頼むから」
「……すきなんだ」
荒い吐息交じりに言われた。目の前がくらくらした。
「くにひこが好きだ」
ああ、
嘘だろ
れえ…
傍にいたい
今度こそ守りたい
俺が
だけど
俺は身体を離し、れえをベッドに座らせた。
「俺がヘンな態度とったからだよな」
「………へん…?」
「屋上から追って、階段で」
「……」
「忘れて」
「…くに」
「…ごめん」
それだけ言って、もう振り向かずに病室を後にした。
エレベーターに乗って一人になった途端に体中の力が抜けた。
喪失感なのか、後悔なのか、安堵なのか、
わからない
もうどれだって一緒だ
れえの傍にいないと決めたなら
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