第13話

施設の人が気を遣って、いつもは面会で遠方からやってきた家族用に使っている個室を開けてくれた。

そこに川の字になって寝ることになったんだけど

なんかよく考えれば変な感じだよな…


一日はしゃいで、大泣きした陽菜はすっかり疲れていて、床につくなり静かな寝息を立て始めた。

消灯したとは言え、まだ22時過ぎで眠気は訪れそうにない。

暗闇の中、そっとおさえた声で川瀬が俺の名を呼んだ。目線をむけると、薄闇にいつもの川瀬の少し艶めいた瞳が見えた。


「ひな、すごい懐いちゃったね。絶対くにひこさんの事スキとか言い出しそう」

「…お前は思ってたよりちゃんと兄ちゃんしてるんだな、意外だった。」


少し沈黙があり、陽菜の寝息とこつこつ時計の音だけが流れた。


「ねえ、傍にいってもいい?」

「ダメに決まってんだろ」

「……む―…」

「お前もいずれ落ち着いたら、ここに入れてもらえるんだろ?ひとまず良かったじゃん」

「そう…だけど。ねえ、寂しいの俺だけ?」

「…あ?」

「全部終わって寮出る事になっても、もう会えないなんてヤだよ」

「…大人しく寝ろ」


嫌に静かになった川瀬に、若干ヤな予感が漂いはじめる。

こいつ下手に拒否するとむしろノッてくるんだよな…


今はそういうのいらないから。マジで。


て思ってたら、案の定とすとすと控えめだけど確かに人の足跡が近づいてばふりと俺と陽菜の間に入り込んだ。

「……かーわせー」

「俺がいいんだから、いいの」

って、もう息荒い。隣に自分の妹寝てんのに、どうやったらこんな状況で興奮できるんだよ。

むしろそうゆう状況が逆に刺さったのかな…


できるだけ刺激しないように笑いながら「なんだソレ」って軽くあしらおうと背を向けた。

……けど、その肩をぐっと押されて、仰向けになった俺の腰に川瀬ががっつり乗っかってくる。

「いや、いいわけないだろ」

今度は真顔で川瀬の手を止めた。

「無理、だって、もう…治まんないんだもん」


俺はそっと起き上がると、川瀬の手を引いて静かに部屋を出た。

部屋のすぐ目前にあったトイレに川瀬を半分荒く押し入れ、それから自分も入ると、小さなトイレはすぐに窮屈になった。

施設の壁は薄い、不用意に声を出すと、誰か起きてきてしまうかもしれない。

そもそも陽菜が今起きて部屋にひとりだと不安がるに違いない。

そんな状況が、やっと俺の琴線に微かにふれてはいたけど、妙に冷静だった。

淫らな行為をしている感覚もなくただ、おおよそ機械的に川瀬のズボンを下ろすと

その昂りを特別何の躊躇もなく自分の手で掴んだ。


「声抑えろよ」

それでも声が漏れ出ないように自分の左腕を川瀬に噛ませた。

「好き、ほしいよ」

「わかったから…黙れ」

俺の乱暴な言い方に、川瀬は二度大きく身体を震わせた。

相変わらず、びっくりするぐらいM気質。


川瀬は息を整えながら少し不満げに振り向いたけど、それでも自分で自分を納得させたのか、

すっかり全部吐き出してしまうと、大人しく部屋に戻ってようやく眠りについた。

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