[礼の心]6
「礼は話してもらえなくてくやしかったんだな」
兄ちゃんの声がやたら低く響いて、俺はなんでか少し不安になった。
悔しかった……?
「そう…なのかな、わかんね。やっぱ俺がガキだからかなと思って」
「礼をガキ扱いなんかしないだろ」
「兄ちゃんが子供だっつったんじゃんか」
「俺は礼がどんな反応するか見たかっただけだよ。俺だって知らないことはたくさんあるんだぞ、礼。飛び込むのに勇気がいることだって山のようにある。でも、今の礼はまだゲームとか菓子とか、自分の中の世界のが好きなんだろ?」
「…自分のなかって?」
「他人に何も求めたりしてないだろ。俺がいなくなっても悲しくないもんな」
兄ちゃんがいなくなってもって
なんで、そんなこと今言うんだって思いながら、
だけど実際はそんな事ない
ほんとは兄ちゃんが結婚するってきいてどういう意味かわからなかったけど、
今の関係が終わってしまうのかと思うとたまらなく寂しかったのは事実だ。
ゲームや菓子が好きだけど、
にいちゃんはそれと天秤にかけられるような存在じゃない。
「いなくなるとか、考えたことない」
「結婚ってどうゆうことかわかる?一番が、奥さんないし家族になんの。子供生まれたら、こどもが一番。俺がそうなっても別に礼は平気だろ?」
「......、」
「わかんないか」
「わかるよ、いってることはわかる。けど...」
言葉にならなくなった。
兄ちゃんが結婚して、誰かを一番に思うことは必然だとおもう。
けど、確かに俺の中になにかつっかかる気持ちがある。
それが、昨晩中庭で国彦と男子生徒がキスしてるのを見て、とても
見逃せないくらい大きくなったのも事実で、どういう気持ちがどうやって作用してるのかよくわからないけど…
その日はあまがさ先生と一緒に兄ちゃんの家に泊まることにした。
眠くて、昨晩兄ちゃんの部屋で何があったのかとかもうすっかり忘れてくつろいだ。
それに今夜は先生もいるから、なんか合宿的な楽しさもある。
兄ちゃんたちは途中コンビニに寄ってウイスキーを買った。
俺は二人が美味しそうにのむのを眺めながら、うとうとしたり、はっと起きて話に加わったりした。
「柏原寝てていいからな」
「それって、うまい?」
「ぜったいダメだからな柏原」
「いいよあまがさ、これも勉強だ。礼、ほらこっち来い」
近くまで行って、兄ちゃんの飲んでるウイスキーを口に含む。
ごくり。
に、が、
にがっ!!!
喉熱い
こんな、の、おいしくな、、、
「うまいか?」
「むいっにがっ」
「陽!お前なぁっだからヤメロって、しかもいきなりロック...柏原大丈夫か?」
「だいじょぶだって一口も飲んでない。なめただけだから」
あえ?からだ、ちから、はいらなひ
「熱い、」
「ははは、かわいーなー礼」
「柏原、気持ち悪くないか?」
「そんなすぐまわんねーだろ。むしろ気持ちいいよな」
「水飲め柏原」
「大人の味だっただろ礼」
「教師の前でお前な」
って、ゆうふたりの会話が聞こえたとこまでは記憶してる。
けど、俺は兄ちゃんの膝元でばたりと倒れたまま寝てしまった。
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