[礼の心]1
ずっと兄ちゃんに憧れてた
そばにいるとほんとの兄貴みたいで安心する
楽しくて、俺の知らない色んな世界を知ってる
だけど…
2限目の休憩中、廊下で兄ちゃんの姿を見つけた。
学校で会えんのがうれしくて走って兄ちゃんを追いかけたら兄ちゃんも気付いて俺に向かって手を振った。
休憩は10分だったけど新しく買ったって言ってたバイクをどうしても見たくて校舎裏の駐車場に向かって
そのバイクと初めて対面した。
兄ちゃんの新しいバイクはすげーかっこいい最新型で
俺のテンションはマックスだったんだけど
そこで予鈴がなって俺はしぶしぶ教室に向かおうとした。
それを兄ちゃんに引きとめられた。
振り向いて確かめた兄ちゃんの顔はいつも見た事ないようなまじめな顔で
一瞬ぞくりと恐怖のようなものが背中を凍らせた。
『俺が言っといてやるからもうすこしここにいろ』
『ダメだってマジ怒られる』
『なんだよ礼、結婚祝いだと思ってそのくらい覚悟しろ』
『結婚祝い…』
『礼?』
『結婚したら会えなくなったりするの?』
『俺に会えないの悲しいか?』
『悲しい…つうか…』
『礼が結婚嫌だっていうならしないよ』
『…え?』
『俺は礼が一番大事だから』
『兄ちゃん?』
『一番好きだから』
いつもみたいに冗談でかえそうとおもったのに
あまりにマジなトーンに、耐え切れず俺は兄ちゃんの手を解いて走って逃げた。
兄ちゃんの事を本気で尊敬していた。
それをなぜか裏切られたような気分になって
そうすると途端に自分の存在がすごく恥ずかしくなった。
部活が終わって、俺がいつものように国彦の寮部屋に向かうと国彦は部屋にはいなかった。
いつもならこの時間になるとゲームか音楽聞いてくつろいでるのにな
同室の稲城が勉強机から振り向いて言った。
「五嶋ならちょっと出てくるって。もし柏原が来たらすぐ戻るからまってろって言ってた」
「外に?」
「多分」
…もう暗いのにどこ行ったんだろ
そういえば、彼女と別れたっつってたけど
新しい彼女…に会いにいってたりとか
…………、
なんかイラっとするなー…やめやめ。
「なー、稲城俺の事どう思う」
稲城が派手な音で吹き出して机に突っ伏してる。
やべ…言い方間違えたか。
「違った、お前から見て俺ってどう見えるの」
「かし、柏原、は……そりゃ、か……う、」
「う?」
「わぁあっごめん俺ちょっと出てくる!!」
「あっ!?ちゃんと教えろよ」
稲城は逃げるみたいに部屋から出て行った。
なんなんだよ…
次会った時、兄ちゃんとどんな顔してあえばいいんだろう
ちゃんと普通に話せるのかな
会いたいのか会いたくないのかさえよくわからない。
今まで兄ちゃんに対して抱いたことのない感情が胸をチリチリさせてる。
怖い気持ちもある。
俺はしばらくテレビもつけないで一人ボーッと考えていた。
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