第9話
れえは少しとまどって思案するような顔をして目を伏せたけど、すぐにハッと何かに気付いた表情になって俺を見た
「そんなんあるわけねえだろ!!なんで国彦までそんな事言うんだよ」
「でも、ロミオさんはマジなんだろ」
「兄ちゃん、おかしいよ。結婚するって言ったばっかなのに」
うん。そこはほんとそうだよね
れえは小さくため息をついて窓際の柱にぐったりもたれて力なく言った
「なんで俺こんなんばっかなんだろう…俺変なのか」
「変じゃないじゃん」
「変だよ。……だってくにはこんな男だらけでもそんな事ないだろ。俺ばっかこんな」
冷静を装ってはいるけど、
れえはショックを受けていた
ロミオさんにそうゆう気持ちがないと知った俺は単純に喜ぶべきところだったのかもしれないけど、
なぜかさっきより気持ちが重くなって
言葉がまたしばらく出てこなかった
それでもれえが思案してるのをどうにか掬いとってやりたくて
言葉をなんとかひねりだした
「気持ちがないなら断ってやれば?」
「…でも」
「でも?」
「そうしたらもう遊びにいったりできなくなるのかな」
「……しばらくは、そうかもな」
れえが明らかに不満げな顔をした
だから俺はまた言葉を選んで尋ねた。
「会えなくなるのは嫌だ?」
「わからない」
「何が」
「…きもちわりーよ…自分が。なんで俺男にばっかり……ロミオ兄ちゃんは好きだ。
でもそんな気持ちで見た事なんかないんだ。そんなん当たり前だろ。どうしてそんな事言うのかって、考えてると、嫌いになりそうだ。もう嫌だ。こんな自分が嫌だ」
れえはその場にすっかりうずくまって
本気で泣きだしそうだ
俺は、その色んな感情を堪えるために小さく震え始めたれえの髪に
手を添えて慰めたかったけど
そんな事すら今のれえを傷つける気がした
きもちわるい、か
そんな風に思わせたくなんかないのに
思わせるために想ってるわけないのにな
だけど
俺だってわかるよ
俺だって同じだ
好きだって気持ちをれえに伝えたられえをもっと苦しませる
これで
痛いくらい
心臓ぶち抜かれたくらい
わかるよ
またガキって笑われるのか
でも、だったらガキでいい
れえが苦しむなら俺は一生言わない
そんな想いにさせるくらいなら想いを断ち切る
「れえの答えは出てんだから堂々と無理って言えばわかってくれるだろ」
「でも」
「そんな不安げな顔すんな、大丈夫だよ。ロミオさんそんな弱くないって。ずっと大事だったんならなおさらだろ」
「…くっそ……なんかお前がゆうと妙に説得力あるのが腹立つ」
「は?」
「お前はしらねー内に付き合って知らねー内に別れてんじゃん回転はええよ。どうしたら女の子にモテんの」
「れえかわいいもんな」
「おい、キレるぞ」
俺が冗談でからかうと
ようやくいつものれえみたいに表情が軽くなった
いつか笑い話みたいにして話せる日がくるんだろうか
このまま大人になって
別にそんな未来を夢想したいわけでもないのに
ふとれえの笑顔を見ながらそう思った
今はただそんな妄想すら苦しいだけだ
いつの間にか、れえを想う気持ちが俺の一部になってる事に気付いた
戦闘科だって元はただロミオさんに対抗したかっただけだ
単純に強くなって今度は俺がれえを守りたかっただけだ
幼い子どものころから何も変わらない
ずっとれえがほしかった
俺だけのれえにしたかった
独占して誰も知らないれえを知りたかった
でもこれで終わりにする
ここで終わりにする
「やべ、クラブ遅刻だ!…とにかくまた夜な!」
「おお」
れえはそう言うと急いで体育館の方へ走っていった
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