第4話
れえの一番になりたい
なんて、
隣にいながら何度強く思っても
これ以上何を求めているのか自分ですらはっきりと理解できてない俺はその想いを暴発させないようにするのがやっとで
せめて親友でありたいと
言葉を書き換える事がこのところとても難しくなりはじめている自分を
波音でなんども打ち消した
それから、時間はあっという間に過ぎて
夕暮れになり辺りは薄暗く、肌寒くなった。
ロミオさんはさすがに足を洗う真水までは用意していなかったけど、
やわらかい真新しいタオルをれえに渡して足を拭くように言った。
車で寮まで送ってもらう前に、ロミオさんの家に寄る事になった。なんでも、家で待っている婚約者に会わせたいのだと言う。
ロミオさんの家に向かう車中れえはいつもより少し言葉数が少ないくらいで、特段変わった様子はなかった。
俺と同じで結婚という言葉が自分からかけ離れすぎていて、実感がわかなかったのかもしれない。
マンションの入り口に、事前に連絡を取り合っていたのか、ロミオさんの婚約者らしい女性が立っていた。
「みお!」
呼ばれた女性はこっちに向かってにっこり頬笑み、軽く会釈をした。薄闇でもわかるほど整った綺麗な顔立ちが、ロミオさんが近づくにつれゆるりと弛緩する。
清楚でそれでいて芯のありそうな大人の女性だった。
「はじめまして、澪です」
みおさんはそう言うと、またぺこりと頭をさげ、今度はれえの方を見ながらにっこりほほ笑んだ。
れえの方は、普段老若男女誰であれ人見知りする方でもないくせに、さすがに“大事な兄ちゃん”の婚約者という存在に面食らったのか、どう接したらいいのかわからないような顔でたじろいでいた。
そんなれえの様子を見ていると、だんだん俺も居心地が悪くなってくる。
そんな複雑な顔すんなよ
「な、みおすげーかわいいだろ、こいつ」
そう言いながらロミオさんはれえの首をぎゅっと引き寄せた。れえの事を以前から話して知っていたのか、みおさんもくつくつと笑いながら頷いた。
「大事な弟だっつってみおにも言ってたんだ」
抱き込まれたれえは終始どうしたらいいかわからない、困ったような顔でいたが、恥ずかしくなったのか自分からロミオさんの腕を逃れて俺の隣に逃げ込んだ。
ロミオさんは車に乗せていた荷物をみおさんに渡すと、また車に乗り込み俺とれえを乗せて寮まで送ってくれた。
結婚、か
俺のこの想いが恋心なら
最大のライバルであるロミオさんが戦線離脱してホッとするもんかと思いきや
事態はそう単純じゃなかった
ロミオさんと別れて、食堂でご飯を食べてから俺の部屋でゲームする約束だったのに、風呂入って帰ってきたら、一日遊び倒して疲れたのかれえは俺の部屋でもう眠ってた。
課題をする為に机に向かっていた同室の稲城が振り向いてまだそこにれえがいるのになれないそわそわした様子で、
何度か起きるよう声をかけたけど全然起きそうにない事を教えてくれた。
横向きに丸まって、すうすう寝息をたててるれえがなぜかさみしそうに見えて
自分の掛け布団をかけてやったられえのつぶった目から涙が流れた
何をそんなに悲しい夢見てんだろうな…
声をかけても起きなかったので、
俺はそこにれえを寝かせたまま自分も床につくと、自覚してる以上に俺もすっかり疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。
深夜、目が覚めてトイレに立った後、テレビの近くで寝ていたれえのそばまで近寄ると
れえは、俺が眠る前に見た体勢のまま静かに寝息をたてている。
なんの意図もなくただ衝動に任せて
ゆりうごかして起そうとしたら、れえがぼんやり目を覚ました。
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