二章

第1話

あれから一週間が過ぎた。

れえと松坂先輩の破局は、学生達の間で静かに広まっていたけど、

それでも入学当初よりれえに不用意に近づいてくる奴らもいなくなり落ち着いていた。


ついれえを前に(本人は寝てたけど)好きだと口走ってしまった俺はとゆうと、

なんか子供の頃から抱えてたもやもやしたもんが言葉にした事でスッキリしたはいいけど


かえって別のとこがモヤモヤしだして…


「国彦!」


!!

うぉっ…!びっくりした……

放課後校庭に向かう渡り廊下で、れえが俺の顔をのぞきこんでくる。



「聞いてんのかっ」

「聞いてるよ明日れえの大好きな‘お兄ちゃん’が会いに来るんだろ」

「聞いてんじゃん…たく何怒ってんだよくに」


怒ってねえよ。

顔近いから、まじつらいんだって。


「ロミオさんと会うのちょっと久しぶりなんじゃねえの?れえ」

「うん。合格ん報告した時以来かな。だってロミオ兄ちゃん忙しいし」



…うーれしそうに話すよな。

大好きなんだよな、れえはあの人の事


ロミオて名前からすげえんだけど、髪の毛金髪で今の俺より長身で、ガタイよくて

幼い俺は恐怖すら感じるくらいな。


それに

ロミオさんに対するれえはなんつうか、

異様に甘えっ子つうか…

とにかくいつもと違う。


それだけロミオさんが特別だって事なんだろうけど。




こないだも、ちょうど出張前に、れえん家にロミオさんが来て、高校の合格通知を二人で見せた時だって


『礼、なんかやろうかご褒美』

『…ご褒美?』

『欲しいもんやるよ。何?ゲーム?』

『………』

『なんだよ、礼。合格祝いだから甘えていいぞ』

『…車』

『ん』

『くるまっ…』

『……なぁに赤くなってんの可愛い~なお前。車?俺の車でどっか行きたいの?いいよどこ行く?』

『…いいの?』

『いいよ』

『やった』



てもう、自分で気付いてないだけで、


れえは本気でロミオさんの事好きなんじゃねえかと思うくらい

可愛いくて。



ご褒美とか…ずるいだろ…くそっ

俺もご褒美あげてえ……


「だから、なんで怒ってんだよくに」

「…怒ってないって」

「おいどこ行くんだよ一緒に帰ろうぜ」

「ちょっと便所」


あー…もう病気だよ俺



そんで、明日がその約束の…“ご褒美”ドライブの日なんだけど。

なぜか…つうか、当然つうか、話の流れ上俺も一緒に行く事になった。

明日は休日で、朝早く寮前にロミオさんが車をつけてくれる手筈になっている。


俺ん気持ちなんか当然知るわけもないれえは、楽しみで仕方なくて無邪気に笑ってる。

でも、会うの久しぶりだし、しょうがねえよな。


俺だって行かなきゃ行かないで心配なだけだしな。



俺はいつもより早く床に着いた。





――翌朝。

「くに!起きろっ」

「んあ…?」

「早く起きろ!いくぞ!!」


やべ寝坊した。

俺は礼に急かされながら、でもマイペースに身支度を終えてロミオさんが待っている寮の玄関に向かった。

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