第13話
その日の夜、れえの寮部屋に白学ランを持ってったけど、れえは出て来なかった。
同室の奴も不在でしょうがないから翌日学校で渡す事にした。
だけど、次の日学校に行って普通科の教室を覗いてもれえの姿はない。
やっぱ男にキスとかショック強すぎたかな。
なんかゆっくり思い出すと、Tシャツんなか先輩の手入っちゃってたし、
身体を触られたのかもしれない。
丁度一限目が始まり窓の外を眺めてぼんやりとしていたら、
外の木陰のベンチに、見慣れた茶色い髪の生徒が座っているのが見えた。
れえだ。
俺は思わず勢いよく立ち上がり、自分の鞄にかけておいたれえの白学ランを手にとると
「すんません、急に寒気と吐き気と腰痛が一気に来たんで」といって勝手に教室を飛び出した。
3階の教室から勢いよく階段を駆け降りてれえのいる中庭に向かう。
近づいてもれえは、俺には気づかなかった。
とゆうのも、ベンチで座ったままぐっすり眠っていたのだ。
5月の気持ちいい風がざっと木を揺らした。
俺は特に遠慮せず勢いよくれえのとなりに座った。
ギッと音をたててベンチがきしんだけどれえは全く起きなかった。
「おい、れー起きろ」
こんなとこでよく熟睡できるなこいつ。
起きる気配がない。
どころか夢をみてるらしく百面相みたいにケタケタ笑い出したり軽くうなされたりしている。
器用なやつだな。
しばらく見てると気持ち良さそうな顔してすうすう寝息をたてはじめた。
飽きもせず眺めつづけた。
しばらくして、れえはその表情のままぽろぽろ泣きだした。
…ほんとに、
どんな夢見てんだ
泣かせたくない
俺は涙をぬぐってやりたくて、触れたかったれえの頬に手を伸ばした。
「くにちゃん…?」
やべ……先輩だ。
見られ…てないかなぎりぎりな。
「先輩、どうしたんすか授業始まってますよ」
「いや、くにちゃんこそ。俺はれえちゃんの朝ごはん買ってきたんだよほらあんパン」
「?…こいつどうしたんすかぜんっぜん起きないんすけど」
「いやー昨晩さ、実はれえちゃんが俺ん寮部屋に来てさ」
「え、」
「いや今度こそ何にもしてないよっ同室のやついたし。そいつおもっきしノンケだし!」
「はぁ…」
ノンケてなんだ…?
「で、今までん事は感謝してるけど恋愛対象としては見れないってちゃんと引導渡してくれたよ。でなんか同室のやつのゲームで一晩中遊んで一緒に学校きたら、れえちゃんだけ学ラン着てないから校門とこで先生に止められちゃってさ。さっきあの塀よじ登ってきたの」
なにやってんだこいつ…
「思わずやっちゃったとは言えさ、俺すげー反省してるんだよ。今まで俺の誘い断る子とかいなかったし。その、くにちゃんもごめんね。」
「や、べつに俺は」
「あんパンとジュースくにちゃんから渡してやってくんない?昨晩は同室のやついたから良かったけどさ、まだ二人きりてのちょっと辛いんだよね」
なんだ、この人ほんと意外に大人だったんだな…
いや、意外意外…
俺にパンの入った袋を預けて先輩は走って教室の方に向かう。
だけど少し行ったところでくるりとこちらをふりかえり
「あ、それからちゃんと気持ちは伝えろよーい!我慢は身体によくねーぞー」
と俺に叫んだ。
我慢て…
おもいっきり説得力ないな
てか、やっぱさっきの見えてたか…
しかし、起きねえなぁれえ。
頬を軽くつねっても
髪の毛軽くいじってもまったく起きない。
てか、
付き合えねえって、
言いにいったんだ。
怖がりなのにな。
頑張ったんだ。
「れえ、」
………なんでかな、
怖いくらい抵抗もなく、今はただ単純に思う
「好きだよ」
「…おれも」
…え?
お れ も ?
「おれも食べたいっ!!ばかぁぁああっ!」
「………、…」
「あれ…国彦?…俺寝てた」
寝言ーーー!?
「……、先輩が朝飯くれたぞほら」
「あんパンだっっ」
あーあ…とうとう口に出しちまった…
力が抜けてがっくり肩下ろした俺をよそに
無邪気にあんパン頬張ってるれえを見て、
そしたらもうなんか俺もどうだってよくなる。
それから空を見上げると気持ちいい晴天だった。
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