第12話

鍵がかかっていたが、新しい校舎に見合わず昔ながらのゆるい鍵だったため破壊も簡単だった。





部屋が暗くて一瞬何を自分が見ているのかわからなかった。

れえがロッカーに右手を押し付けられたまま松坂先輩とキスをしていた。



と、いうより、あきらかに強引にされてる。


はっと唇を離した先輩とまず目が合い、

呆然としてゆっくりとこちらを向いたれえとも目があった。




何があったかわからないような顔をしていたれえの表情が、俺を見た瞬間からみるみる変わってゆく。



「れえ…」

何か言わなければと思ったのにとっさにソレしか言えなかった。


れえは真っ赤になって松坂先輩を睨みつけた。

「……なんなんだよくそ、ふざけんな」

小さい犬がきゃんきゃん吠えるみたいにれえが必死に虚勢をはる。

「おい、れえ」

どうにか落ちつけたくて近寄る。

わかってるって無理矢理されてた事くらい


なのにれえの興奮は収まるどころか激しくなる

「男同士でこんな、…気持ちわりいんだよ!!」



俺は

半分無意識に近い感覚でれえと先輩を遮ってまたロッカーに軽く押してれえの左頬をはたいた。


たぶん全然いたくなかったと思うけど。

自分の行動にハッとした。


俺の背で先輩が驚いて俺の名をよんでる。

いや、俺だって驚いてるし。

男に無理矢理キスされた幼なじみになんて仕打ちだ。

だけど…


「でも先輩はまじでお前んこと好きなんだぞ。先輩の気持ちを利用するだけしといて生殺しにしてきたお前も悪いだろ、その上気持ち悪いとか、よく言えたな」


れえが俺を睨んでる。

「…でも、わかんねえよお前になんかっ」

「…あ?」

「チビだし…、男にこんなんされる俺の気持ちなんかわかんねえよボケッてめえなんかもう友達じゃねえどけっ」


ドンと肩を押されてれえが部室を出て行った。

走り去る足音が聞こえなくなるまでその音を聞いていた。

ロッカー前のベンチの下に無造作に落ちていたれえの白い学ランを拾いあげて、埃をはらう。

あまりの急展開にア然としていた松坂先輩と目があった。


「あ、すんません邪魔して」

「やー…むしろごめんな…俺」

何このしおらしさ…

まじで松坂先輩ってこの派手な見た目からは想像できねえけど案外律儀だったり…

節操はなさそうだけどな


「こんなんになるはずじゃ…俺普段はまじ紳士でね!…もっと大事にしようと思ってたのにあんましかわいいからつい☆ごめんねっテヘ」


いや、テヘ☆じゃねーよ


「俺友達ひとりいなくなっちゃったんすけど…」

「うわぁ~んごめんよぉおっくにた~ん」




きもちわるい、か

先輩の気持ちを生殺しだって?


よく言えたなって

それは俺の方だよ



れえ、

今までしてきた喧嘩にくらべたらこんなの全然





だけど… 俺には

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