第11話
翌日かられえと松坂先輩の偽装交際とやらが始まった。
朝寮から一緒に登校して昼飯を一緒に食って、休憩は校庭か中庭の人目のつきやすいところで二人で過ごす。
最後に部活後一緒に帰寮する。
意外にも効果があるみたいで、れえに不要に近寄る同級生はいなくなった。
へぇ……松坂って人ほんとに影響力あんだな。
そうして、ほぼ平穏に一週間程が過ぎた。
まぁ平穏っつってもれえにとっちゃ地獄にゃかわりねえか。
芝居(ヤラセ)とは言え、廊下で松坂先輩に抱きつかれたり、仲良く校庭のベンチで昼飯あーんしあったりとか…
ほんとによく耐えてるな。今にも発狂したいだろうに。
「ねえねえ、くにちゃん」
「…?…あぁ、俺っすか」
「君しかいないでしょっ」
掃除時間屋上でサボってたら偶然松坂先輩も上がってきたんで
何故か変なあだ名で話しかけられた。
「礼ちゃんてさ好きな子いるんかな」
「さあ…全然聞かないんで。でも今はいねえんじゃねえかな」
「ね、どんなタイプが好きなのかな」
すんげえ前のめりで聞かれた。
もしかしてれえに本気になっちゃったとか?
だけど俺にそんなこと聞いてくるなんて、この人見た目より意外と真面目なのか?
「女の子らしくてわりと大人しい清楚なお嬢様系が好きみたいっすね」
「違うよ~男の好みだよー」
「いや、男は好きじゃねえと思いますけど」
「じゃ俺が好きにさせるし」
あーあ…こりゃだめだ
罪作りだなぁれえは
こんな時、
俺のが好きだから手を出すな、
とかなんとか言ってたんか切れないのは
俺の想いが恋じゃないからだろうか。
だけど、実際人のもんになるとか想像できないから実感がわかない
ただ傍にいたいだけだ
―――違う、抱きしめたい。
今ある友情を大切にしたい
―――違う、友情壊してでももっと近くにいきたい。
全く反対の想いが巡っちゃ消えてく。
ガキくせー…
…いや、そりゃガキだけど
これが、ししゅんきとかいうやつなのか?
そうこうしてる間にもれえと先輩の偽装交際は続き、
次第にれえをお姫様みたいに扱ってた奴らの熱も劇的に下がっていった。
まぁあれだけ人目つくとこでイチャつかれりゃ誰だってな。
そんなある日、
「あ?」
「だから、松坂先輩に言ったの、もう偽装交際はやめましょうって」
風呂から出たれえは、俺の部屋にゲームをしにきていた。
同室の稲城はちょうど弓道部の遠征でいなかった。
格ゲーをやりながらあっけらかんと言ったれえに俺は画面から一度ちらりと目線をうつした。
れえはゲームに熱中してる。
「で、なんて?」
「んー…」
「聞き入れてくれたの?先輩」
「は?聞き入れるって?よくわかんねえけど明日の放課後部室来いとか…おっ!よっしゃっっ俺の勝ちっ明日のゴリゴリ君くにのおごりぃいっしゃっ」
「行くの?」
「?当たり前じゃん」
れえが俺がそう聞くのはほんとに不思議だといわんばかりにあっさりとそう答えた。
翌日の放課後俺はれえと約束してたわけじゃなかったけど、
賭けてたアイスの事もあったし、
先生につかまってまた荷物移動を手伝ったりしてたせいもあって、
結局、丁度部活終わりごろに帰寮する事になった。
本気になった松坂先輩がどうゆう行動にうつるのかは全く予想がつかなかったけど、
ただ妙に気になったのでバスケ部の部室に寄った。
人通りのすっかり絶えた薄暗い夕暮れの廊下に、人の気配はしなかった。
れえはもう先に帰ってしまったのかと思い、俺も帰ろうとした時、
部室から何かがガタリと倒れるような音がして、続いてくぐもったような声がかすかに聞こえたので、俺は慌てて部室の扉をあけた。
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