第10話

入学から2週間過ぎた。


あれから何度か高崎と電話したけど、

俺があんましそっけなかったからか2日前メールであっけなくふられてしまった。


そりゃそうか。



別れた事はれえには言ってない。

特別意味はないけど

別れたからってどうするって事ないしな。



俺はれえの事が好きだけど

正直、どうゆう好きなのかまだわかってない。


独占したいし、そうなれたらいいとも思うけど、

力ずくで引き寄せてまで、今の関係を壊したくない思いも同時にある。


裏を正せば、制御のきく程度の想いって事かもしれないけど。





「偽装交際?」

よく晴れた昼休憩、屋上でれえと昼飯を食いながらそんな言葉を聞いた俺は思わず箸を止めた。


「いい加減気持ち悪いんだよ!廊下歩いてるだけなのにぎゃーぎゃーうるせえし…コケただけで抱えられて保険室だぞ」


俺は思わず吹き出した。

「国彦ぶっ殺す」


れえかなり切羽つまってんな。

入学式んときの余裕はどこ行った。


「だから、男と偽装交際?」

「だって松坂先輩がっその方が奴らも大人しくなんだろって…」

「松坂って…」


あのショタ引き連れてたチャラい人か。

なんか…危ないんじゃねえかソレ


「あんま甘く見て痛い目にあうなよ」

「えらそうに命令すんな国彦」


だって、

いくらそうゆう好きじゃねえとしたって

間違いでも男がれえに何かしてんのとか

考えただけでいらつく


「れえ俺と偽装交際する?」

「しねえよくそがっ」


ちえー



「それにおまえじゃ意味ねえよ。なんか松坂先輩俺らの学年に人気あるらしくて、その先輩の恋人にめんどくさい事は出来ないらしいぞ」

「ふーん…」


偽装交際って何

そもそも男同士ってどうゆう交際…?

廊下で手とか繋いだりすんのか?


いや、しねえだろ…

いや、するもんなのか?

わかんねえ


そも偽装の意味がわかんねえし

そんなんしなくたって

れえに手えだす奴なんか俺がぶっ倒す



…て

あーあほんとに手遅れだろ俺


「…俺教室戻る」

「ん?おお、くに。帰りになー」



れえが無邪気に手を振ってる。


俺は閉めた扉にまたズルズルしゃがみこんだ

あー…くそ。

きもちわりぃ



まだ子供だった頃、

いつだったか


眠ってたれえの頬にキスをした事がある。


夏の暑い日で、れえん家の庭で蝉をとってたんだ。


だけど必死にさがしてる内、軒下でれえが疲れて寝ちまった。

呼んでも揺すっても起きなくて

途切れない蝉の声と、気まぐれになってる風鈴と、湿気と、

木陰の涼しさと

微かな汗の匂いと



俺は 触れてみたいって頭で思う間もなくれえの頬に顔を近づけて



それは駄目だろ

いけない事だって子供心に思ったから、

今でもれえを大事だって思う度

あの時の記憶が鮮明に蘇って、それから激しい嫌悪感がくる。


あの時から俺は

頬にキスして、


もっとその先を見はじめる自分が怖かったんだろう。


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