第9話
「…わりい稲城かわりにやってて」
「えっ…ちょ」
俺は部屋を出て廊下で電話をとった。
「もしもし」
『もしもしっごめんね。疲れてるってわかってたんだけど…』
「うんう。…いいよ。そっちは?寮だろ、大丈夫なの」
『平気!今朝、ごめんね、あんな事になるなんておもわなくて』
「や、びっくりした。弁当ありがとう。うまかった」
『…、ど、どうしよう、嬉しい』
高崎の声が聞こえたのと同時に、扉がばーんって開いた。
勢いよく開いた扉で俺は背中を打った。
痛てえ
背中さすりながら顔をあげると部屋かられえがどすどす廊下歩いてく背が見えた。
あれ、また怒った…
『五嶋君?どうかした』
「…いや…ごめん大丈夫」
あ ぁ こ りゃ だ め だ
ちょっと離れたくらいでこんな
『あの、あのね、五嶋君の事、美奈子とかひなに言っちゃったの。…ごめんね』
「みなこって小笠原?そっか同じ高校だっけ。いいよ。そんなん……怒んないって」
『私…本当に信じられない…』
「なんで」
『…だってすごく…五嶋君人気だったし』
「高崎こそ男子に人気あったよ」
『……そんなの…』
手遅れだな…俺
可愛い
すげえ可愛い
むしろ可愛がりてえ
俺だけのもんにしたい
こんなん
彼女の声を聞きながら、思うなんて最低だ
俺は、たまらず頭抱えて扉に背を預けたままずるずるとしゃがみこんだ。
だけど、とてもじゃないが抑えきれない。
うっすら吐き気すらするくらい
端的に言ってしまうと
俺は
ついさっきまでこの部屋の扉向こうにいた
幼なじみの事が
本当に
信じらんねーぐらい好きだったのだ
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