第7話

今日は一日かけて、校内の施設説明だの一年間のカリキュラム指導だの、身体検査だの…

始まりにする様々な事を一挙に詰め込んだ一日だった。


一年前建ったばかりの校舎は新しく、戦闘科の為の分校といっても過言でないこの学校には、プロのアスリート並の最先端の機械を集めたジムが併設されていた。

その他、実戦をリアルにシュミレーションできるVRマシン。

野外での戦闘シュミレーションの為に人工的に作られた裏山には、実戦演習として時に異常種となった獣を実際に放す事もあるらしい。


それらの施設を一つ一つ確認して、

ただでさえ広大な土地を無駄にゆっくりと歩いたせいで、帰る頃にはへとへとになっていた。

学校から徒歩10分位の所に、今年から新設された寮があり、今日からはそこが我が家になる。

実家から通えない距離ではないし、他の生徒もそうなのだろうが、ほぼ全生徒が入寮する事になっていた。


全てが終わり寮に向かう時、席の近い海棠水樹が話かけてきた。

初対面ながら、これまで何年も友人だったみたいな、気負いのない空気に、親しみすら感じるけだるさがかえって居心地がいい奴だ。

寮に向かう道すがら、そんな海棠の携帯が鳴った。


「…もしもし。あーゴメン学校今終わったー。え?いやほんとだって。何言ってんの男子校だよ?」


カノジョか…

あーあ…朝の事思い出しちまった…

なんでれえにあんな風に言っちまったんだろうな。


「ごめんな国彦」

「彼女?」

「うん。お前は?いるんでしょ?」

「…なんでわかんの」

「わかるよー。女の子に好かれそうな顔してるもん」


…へえ。


「さっきから携帯気にしてるしな」

「…あー」


つうか、気にしてんのは…


と、ハッとさせられるような音で今度は自分の携帯が鳴り、急いで見ると画面には【着信・高崎ゆみ】と表示がある。


「とらねえの」

「ああ」


高崎はすげーおとなしくて、所作や言葉遣いも繊細で可愛いから

ひそかに男子にも人気があった。

そんな高崎から卒業式の日に告白されて、俺たちは付き合う事になった。

それ以来たまに電話をしたりはしていたけど、付き合っていると言えるかは微妙で

れえに言ったって良かったけど俺は、


れえが高崎の事いいなって言ってたのを知っていたから、

なんとなく言いたくなかった。


れえが気に入ってた娘だからってのもあるけど

実は付き合うのこれで三人目でそれすら伝えていないから今更

だからって

『中二の夏に一足先に大人になったぜ』とかそれこそ今更自慢めいてみるのもおかしいしな…


そうしてしばらく歩くと寮の門が見えてきた。

校舎に比例して、やはり寮もバカでかい。

ついこないだ出来上がったばかりの近代的なデザイン、無駄がない簡素なつくりの建物で、玄関には自宅から送られた荷物がそこここに積まれている。


俺達は玄関先に張られている部屋割を確認した後、互いの部屋に別れた。


部屋は二人部屋で、入ってすぐ右に一口コンロと流しの簡単なキッチンがあり、その奥にシャワーとトイレ、

広さは8畳で対面にベッド、窓際に机が二つ。

左に小さな窓があり、右にベランダに出られる大きな窓がある。

ガラスはピカピカ。


外に広がる木々と、その向こうには、高台に建つため、遠くに海がキラキラと煌めいているのが見えた。

建物はまだ新しい木材や塗料の匂いがする。


しばらく部屋中をうろうろしていると同室の稲城が部屋に入ってきて簡単に挨拶を交わし、実家から届いた荷物を開けるのも適当に、俺は部屋を後にした。

腹減った…食堂があるんだよな


真新しい廊下を歩き食堂に向かうと、まだ時間も早いからかまばらな生徒達の中に

れえの姿が見えた。


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