第5話
入学式の翌朝、駅前でれえを待った。
寮には生活に必要な物は大抵そろっているし、
入寮してから徐々に運ぶものもあるので、今日持っていく荷物は、とりあえず最小限にまとまっていた。
昨日の事もあって、実は俺少しだけ気にはしてたんだけど、
れえはあれだけ大騒ぎしたのが嘘のように、白い学ランを着て、飄々と待ち合わせ場所にやって来た。
ま、大丈夫だろとか思ってんだろうけど、
お前がそんな軽いノリだと逆に心配になんぞ。
まぁ、とって食われるわけでもなし、特別気にするほうが変だと言えば変なんだけどな
電車の中で目があった礼が小首をかしげてる。
なんもねえといいけどね。
程なくして学校に着いた俺達は、まだ慣れないその校門のバカでかさに少しだけたじろぎつつも、それをくぐって校舎に向かう。
高校なのに、大学のサークルみたいに、部活の勧誘みたいな先輩達が脇を囲む中、真ん中の道を通ってゆく。
柔道部、野球部、水泳部、バレー部、剣道部…
やんわり勧誘を断りながら一通り通り過ぎたとき、
もうあと数歩行けば校舎って所で、れえが呼び止められた。
「れーちゃ~ん!」
その道程で散々いじられていたれえは、
イラッとした様子で振り向いた。
そこにはバスケ部とだけ書いたダンボールを首から下げ、頭には派手なバンダナを巻いた男が大きく手を振りながら立っていた。
どうやら同級生じゃない。
お、それにれえと同じ白ランだ。
てことは…
「松坂先輩」
「ん、れえ知り合いか」
「おー、春休み先にバスケ部見学行ってたから」
れえはまだ身長150cm半ばだけど、この背丈で中学からバスケをやっている。
中学ん時は今より背低かったから、あまりレギュラーとれなくてもうやんねーとか言ってたけど、高校入っても部活やる気だったんだな。
「れえちゃん白ランにしたんだね~可愛い可愛い」
「誰がんな伝統つくったんですか!いい迷惑ですよ」
「いいじゃん似合ってんだからさ~それよか誰?」
必要以上に二へ二へしたまつざか?先輩が俺を指差す。
て、指輪とかジャラジャラつけてるし。
ピアス目立つわ、髪は金色だわ…
ぶっとんでんなあ。
「くにひこ。幼なじみ。」
れえがタメ口で答えた。
「へぇー仲良しさんなんだねっ」
…なんか見た目よりお茶目な口調だなこの人。へんな先輩。
俺は軽く会釈した。
「俺松坂佑。今高二~。くにちゃんもバスケ部入んな。ぜってーおもしれーからさ」
くにちゃん…
あ、俺か。
「考えときます」
「まじでっ?はぐらかされそー」
ケタケタ笑う松坂先輩の横でれえが「もう行くんで、じゃー」って去ろうとする。
「あ、待ってれーちゃん」
言いながら松坂先輩はれえの腕を引っ張った。
「まつざかせんぱぁぁあ~いっ」
その時、どこからともなく黄色い…わけないのだが、とにかく甲高い声が聞こえてくる。
白い学ランの男子生徒数名が走り寄ってきたのだ。
先輩と呼ぶからには俺たちと同級生なのだろうが、みな礼と同じかそれより更に少し背が低く、目元もパッチリしていてどことなく可愛らしい。
て、おい俺…可愛らしいて
なんか、この学校にいると感覚麻痺しそうだな
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