第4話
家に着き荷物と上着をベッドに放ると俺はすぐに隣の礼の家に向かった。
「よぉ、くに。上がる?」
れえはいつものように、フード付きのパーカーにジーンズとゆうラフな恰好で、
片手にポータブルゲーム機、口にはアイスキャンディーをくわえていた。
いつものように玄関を無遠慮にどかどか上がると奥から人影が見えた。れえの母さんだ。
「あら、くに君いらっしゃい」
おばさんにいつも通り挨拶して玄関すぐの階段をあがるとれえの部屋がある。
俺達は昔からよくここで遊んだ。
「れえ、白い学ランやばいぞ」
「え、何」
れえの顔が微かに強張った。
やっぱさすがにおかしいなって思ってたのかな。
「それ、彼氏募集中て意味にとられてんぞ」
「は?」
「なんか学校の裏ルールみたいなもんで、白い学ラン着てる奴は男募集中のサインてことになってるらしい」
「はぁあぁっっ?」
勢いよく立ち上がったから、れえが持ってたゲーム機はボスリとベッドへ落下した。
「ど、どうしよくに」
「……うーん」
「うわぁあっこんなもん捨ててやるっっ」
れえが窓の外に自分の白ランを投げつけようとしている。
「まて、早まるな」
「だってあいつら怖えんだもんっ奢ったり無駄に物くれたり…て人事だと思いやがって笑うな!!」
「あ、悪いつい」
貢がれるとかどれだけだ…このモテ具合…
「でもお前大丈夫だよ。なんかクラスメイト変な奴だけど牽制しあって手をだそうとまでは思ってないみたいだったし、まぁ気だけは確かに持ってろ」
「手なんか出されてたまるかっくそボケ!」
俺はそれからしばらくれえの逆立った気をなだめる為もあり一緒にゲームして気を紛らわしたが、
明日から入寮なのでいつもより早くれえの部屋を後にした。
明日学校行かねえとか言わなきゃいいけどな。
そりゃないか。
あの『ロミオ兄ちゃん』との約束だもんな。
幼い記憶にうっすら残ってる。
確かに、かっこよかった。
戦隊モノみたいなスーツに、
背中に最新型のビームナイフ仕込んでて。
どうにもできなかった俺の目の前で、
れえを襲った有害奇怪獣を一刀両断したんだ。
それ以来、『ロミオ兄ちゃん』はあいつの憧れだ。
あの学校受験したのだって、あの制服の色だって全部、
『ロミオ兄ちゃん』のすすめをれえが従順に信じてるから、
こんな事ごときでそれをれえ自身が裏切るはずがない。
でも、
明日からはとうとうあの学園に24時間か…
今日一日でこんなありえねえんだから
三年間いりゃきっと思いもよらねえ事が起こるに違いない。
俺は期待なのか不安なのか、
よくわからない感情のまま、
明日の入寮のための準備に取り掛かった。
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