第3話

最後に社会準備室に残っていた6冊を抱えて、

またあの食堂を通ると、そこにはもうれえの姿は無いようだった。

あまりに混んでいたので、一緒にいた3人もいたかどうか確認できない。


「五嶋、助かったよ。腹減っただろこれ食べてきなさい。みんなには内緒だぞ」


おっ食券だ!しかも日替わり定食!まじでラッキー

「いんすか」

「いいよ。飯時にあの道のりは辛かったろう」


遠慮もせず、ありがたくいただいた俺は、さっそく食堂に向かい日替わり定食を頼んだ。

席は満席に近いが、空いてる席にどうにか座ることができた。

初めあまりの空腹に無我夢中で食ってたけど、

この席さっきれえ達がいた席と近いな

そう思い、ふと箸の運びをゆるめた。

後ろをちらりとふりかえったが、そこにはれえの姿はなかった。

…つうかれえが近くにいたら、すぐ声でわかるか。


髪の毛薄茶だから目立つし、背もちっこくて制服白いからわかんねえ方がおかしいな。

俺はいろいろ納得して、おそらくそこらの学校の学食よりでかい、丼みたいな茶碗の白飯をかきこんだ。



「あ、今のどう?」

「いいけど、隣のがまだあり」

「でも違うじゃんな」

「うん、違うね」


特に話を聞くつもりじゃなかった俺の耳に、

背中で数人が話している声が入り込んでくる。


「あ、いたいた!」

「げぇーおれは無し」

「俺も」

「まぁ、反対なら俺は無しじゃないかな」


背で、わっと笑い声が上がった。

さすがに少しずつ気になり、その談笑の視線の先にある食堂の入口に、目を向けた。


なんら変わらない。

ただ生徒達が食券片手に並んでるだけだ。

俺はなんの興味も持てなくて、また黙々と飯をかっこみ始めた




いや


まて




「か、わい~」

「だあから黒はだめだって黒色は」

「え、だってなんかこっち見てない?すげえ目が合うんだけど」

「お前見すぎだろ」

「しっかし、うちのれいちゃん可愛かったねー」

「俺あの子めちゃくちゃツボ」

「みんなそうでしょ」

「八重歯たまんない」

「またノンケの白ランとか…すげえ奇跡」

「なーわかってないとかかなりもえる」

「無理ないかぁ白い学ランが男募集中のサインなんて募集要項には載ってないもんな」



俺は思わず、かきこんだ飯吹き出しそうになんのを必死に堪えた。

戦闘科にも白ランいたけどめちゃくちゃいかつくて、とても同い年には見えない奴で…


つうか、

れえが軽くモテてんだけど…

男に!!



「よぉ!唐沢!ヨッシー、三谷!」


お、れえのクラスメイト増えた…?


「どう?」

「めちゃくちゃかわいい。唇ふわふわっ抱きしめたい」

「さいてー」

「でも抜けがけしてないよな、次一緒に飯食うのは俺だから」

「わかったわかったじゅんばんな」

「あーっまた次昼飯食えんのは来月かなぁ」


て…

前言撤回。


かなり、モテてる。



そりゃ確かに中学時代から可愛い可愛いとは言われてきたが、

れえ男にモテるんだな

共学じゃありえねぇ。

昔から友達は多かったけど、こんなんは初めてだ


まるで姫扱い?



まぁ、

こんなむさいところにアレはいやでも目立つよな。

だけどそうゆう自覚ねえんだもんなれえは。


俺は残りの飯を急いでかきこむと、

飲み込むのもそこそこに上着を適当に羽織って、荷物を持って早足に家路を急いだ。


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