嵐の気配はすぐそこに
ガチャっとノックもせずに入ってきたのは火雷さんだった。
「よう、シン!モテる男は大変だな」
ガハハと笑うこの大男がドカッとソファーに腰を掛ける。
「あれはモテるというか脅しというか教育というか…まぁ、刻みましたよ」
「そうだな。お前は賢くて強い代わりに色々欠如してるからな。あのくらいの刺激があってもいいだろうな」
「っていうか、聞いてたんですね?わざわざ気配を消して」
そういうと、火雷さんが目を泳がす。
「まぁ、いいや。とりあえず今の状況聞きたいな」
「おう。じゃあまず悪い知らせから。地下の件だがな、想像より大きいからそれに伴って敵の数も大幅に変わってきそうだ。それにちょっと海のほうの動きが怪しい。ほかに組織の増加も懸念点として増えた」
「うーむ、そうか。なら引き続き調査を頼む。なんか違和感を感じたら逐一報告してくれ」
「了解だ。じゃあ次にいい知らせなんだが」
そう火雷が言うと外からノック音が聞こえる。シンがどうぞとノックにこたえるとバンッと勢いよく扉が開く。
「シンーーーー!ひっさしぶりぃぃぃぃぃぃ!!」
大声と共に最奥の俺のところまでダイブしてきたのは火雷さんの娘さん。
「おう、
「うん、お父さん」
「響奏、来たのはいいんだがいつまでも男に抱き着いて机の上に乗るのはやめなさい」
「はーい」
響奏がしぶしぶシンの首から腕を外し机から降りる。
「で、いい知らせって響奏のことですか?」
「ああ、いい戦力だろ?」
「それはそうだが…まぁいい。とりあえず響奏来てくれて本当にありがとう」
シンが響奏に向き直ってそういうと響奏がにぱっと笑う。
「ううん。ぜーんぜんいいよ。シンからの頼みならいつでもどこでも駆けつけるよ」
「それはありがたい」
「じゃ、後でご褒美期待してるね」
「はいはい、全部終わったらな」
この一言が聞けて満足だったのか響奏は火雷さんにじゃあねと言ってから部屋を後にした。
「そしたら俺らも仕事に行こうか」
「そうですね。俺はこれから飯を食べに行きますが火雷さんはどうします?」
「じゃあ、俺も行くか。腹が減っては何とやらだからな」
シンと火雷はそうして部屋を後にした。
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「切山さん、本当にこんなんでいいんですかね?」
「あぁ、黄皇館のセキュリティ何て俺の術があればちょろいもんよ。だが、ぬかるなよ?お前が明日の火ぶたを落とすんだ」
「いやぁ、緊張しますけど任せてください。僕にはこれしかありませんから」
目に影を落とすその青年は龍の形を模した笛を片手に目の前のガラスに映った自分の顔を見た。
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「お帰りぃ~。シンはそうだった?」
花奈がエントランスで待っていてタクシーから降りてきた舞と涼香に駆け寄る。
「こってり絞ってきたよ」
「そっか、会えたんだね。よかった」
そこでふと涼香が手を当てる。
「ところで、花奈さんってシンさんと連絡はとれてなかったんですか?」
それを耳にした花奈は明後日の方向を向く。
「そ、そうだね。何も聞いてなかったかなぁ~」
そう答えると舞が花奈に詰め寄る。
「花奈?私の目を見なさい?場合によってはあなたのほっぺたを引き延ばさないといけなくなるよ?」
「いや、でもほら結局話聞けたから結果オーライみたいな?」
「かぁぁーーーーなぁぁぁーーーー!!」
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「あ、花奈先輩。二人はどうでした…ってえぇ!?なんでそんなに頬赤いんですか!?」
「ううん。私が悪いから気にしないで」
「そうそう。花奈が悪いんだから。雫ちゃんは気にしなくて大丈夫よ」
雫は舞の鬼気迫る微笑みに何かを察し口を閉じた。
「とりあえずシンと話してきたよ。まぁ、いろいろ言いたいこと言ってきたしね」
「後は…あ、そうだ。皆さんちょっと聞いてください。私たちがシンさんのところに行くまでにタクシーで行ったんですけどその運転手さんがですね通りを一本封鎖するから住人を全員避難させてるらしいんですよ。これってどう思いますか?」
「避難!?そんなん聞いてないぞ!?」
「ええ、私たちもさっき聞いて驚いたよ」
そんな風に考えていると舞の通信デバイスの通知音が響く。
「全く。手のかかる後輩だよ」
その内容を全員で読むとその場にいた全員は奔走することになるのだった。
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