黒闢祭開催
「皆さん、いつもより早く揃ったね。じゃあ、始めようか」
その言葉を引き金に1人ずつ手を挙げ名乗り始める。
「
「
「
「黄機の国、
「
「
「
「
全員が目を合わせる。
「今回もこの期間がやってきた訳だが、その前に何か言っておきたい者はいるか?」
すると、赤覇院火雷が手を上げる。そして立ち上がる。
「沙霧よ。此度はうちの国の者が大変な無礼を働いた。申し訳ない」
「いえいえ、幸い死者はゼロ。けが人はむしろそちらの方が多いと聞きます。ここはお互い様、という形でどうでしょうか?」
「そう言ってもらえるとありがたい」
火雷はそう礼をすると自席に着いた。
「他にはなんかあるか?」
「そう言えば、最近龍脈の様子がおかしいようです。一応、調査隊を送り込んで調べさせています。結果がわかり次第皆様にも報告します」
「分かった。その件はよろしく頼む。他にはなんかあるか?」
全員を見渡す。
「よし、なさそうだな。楽にするか」
すると、全員からため息が漏れる。
「やっぱりこういう堅いのは疲れる。歳だからこれ以上精神が削られるのは勘弁して欲しいんじゃがなぁ」
火雷が筋骨隆々な腕を回しながらいうと六花が頬杖をつきながら気だるげに言う。
「しょうがないですよ火雷さん。国と国の情報交換ですからしっかりやらないと〜」
「分かっとる。六花はちっこいのに小うるさいのぉ」
「ちっこくない!これでもこの中で最年長なんだからね!」
いつものが始まったと全員が思いながら「まあまあ、そこのお二人さん落ち着きなさいな」と、沙霧からいつもの仲裁が入る。
「とりあえず、各校の代表者もとい生徒会長さんを入れようか」
シンがそう言うと扉の前で待機していた使用人が扉を開けると、各校の代表者が入ってくる。
「今年もまた眩しいなぁ」
「シンさんの眼には毒かもしれませんなぁ」
「源内さんさんも一度味わってみるといいよ」
「おそらくこの世でその眼を使いこなせるのはシンさんくらいしかいませんよ」
「いつも通りお世辞がうまいなぁ」
代表者の顔が完全に強張っていた中で交わされるこの会話で幾分かほぐれたようだ。
「じゃ、今回の黒闢祭でのルールを確認しようか。一輝さん今年もよろしく」
「またかー。へいへい、じゃ、長ったらしいのめんどいからパパッと済ますぞー」
そう言って席を立つとモニターを起動させ全員の携帯端末にデータを送る。
「まあ、既存のルールは特にいじってないから去年と同じだ。ただ、今年からはちょっとした提案がある。その意見を確認するために俺がシンさん以外を少々早めに呼んだ。まあ、ちょっと考えればわかることだが今年からはセブンスの使用を禁止しようと思う」
「だろうなぁ。それはここにいる国王様方の総意なんだね?」
「ああ、源内の野郎はちと渋っていやがったがな」
「ははは、まあセブンス保持者がうちの国から出れば渋りたくもなります。ですが、今年はそうも言ってられませんからね」
「最大の要因は_____」
「牙龍院シン、オメーだよ」
「あははー、ですよねー。知ってた」
一輝さんから手厳しい指摘を受け苦笑いは浮かべるもののそこで不敵に笑うのがシンである。
「まあ、そう言うからには何かしらの救済処置があるよな?セブンスを使って戦うことを予測して練習を積んできたんだ。それをドタキャンされて救済処置がないわけないもんなぁ?」
嘘である。こうなることは誰でも予想できた。だからちゃんとセブンスを使わずに練習もしてきた。しかし、去年はセブンス有りの試合だったため最終決戦はもちろん舞と花奈だった。
「真夜。出してくれ」
「はいよー」
すると、円形の机の真ん中に空間魔法
「今回から各人帯刀できる刀が三振りに変更しようと思う。だから、その数に合うように刀と装飾品を持ってってくれ」
「おおー。太っ腹」
「そうでもしないとシンさんは納得しないでしょう?」
「おお、沙霧さんわかってるねぇ」
「シンさん、鑑定の方もお願いしてもいいですかな?各国の
「わかったよ」
そうして一つづつ見ていくことになったシンは目ざとく一振りの刀を手にする。
「やっぱり気付きやがったか」
「俺の目は誤魔化せないよ〜。これは妖刀
「そー。それはうちの国から出たもの。それにしますかー?」
「そうだね。一振り目はこれにしようかな」
「まいどあり〜」
そして、刀を見ているとふとシンの手が止まる。
「どうしたんですかい?シンさん」
「この刀、
「え、ええぇぇ!?これが!?」
「あぁ、魔力の込められ方が太古に存在したと言われるものでこめられてる」
「じゃ、じゃあその刀にするか?」
「いや、やめておこう。こういう類の刀は_____」
シンの見つめる先にはよだれを垂らしながら刀を見つめる六花さんの姿があった。
「六花さん。これあなたが使ったらどうですか?最近、古代術式研究しているんですよね?」
「え!いいんですか!?ありがとうございます‼︎」
純粋無垢な笑顔を浮かべる六花さん。
「それじゃ、俺はこの刀にしようかな」
シンが一振りの刀を取ると源内さんが感嘆の声を発した。
「シンさん、その刀は上物ですよ。魔力伝導性の高い金属でできてます。切れ味もさる事ながら魔力効率も上がります故、普通に買うとなると相当なお金が発生すると予想していたものです」
「ん?あーそういう事か。なるほどね、じゃあこれにするか。名前は__
シンが意外だったのか目を丸くしていると一輝さんが「さ、セブンスを持ってる奴らの分も持って行ってやれよ」と言われ、シンはハッとして選ぶのと鑑定に追われ、やっと終わると皆げっそりとした面持ちで別れるのだった。
________________________________________
『さー、皆さん!今年もやって参りました、黒闢祭!今回、黒闢祭の実況を勤めさせていただくのは、
『そして解説させていただくのは世界技術機構。通称STOの
そして、このざわめきが絶えないこの場所は黄機の国、最大級のアリーナである【ライトギアアリーナ】だ。この機械仕掛けのアリーナにはいくつかのギミックがあるようだがなんでもこのアリーナができたのが1ヶ月前だ。見せる暇もなく今回の祭典の舞台となった。
そして、ここでは予選第1、2、3グループ、予選優勝チームのトーナメント戦が行われる。
『今年からは《セブンス》の使用が禁止される事となりました。それに伴い、今まで戦闘中の使用可能な刀を三振りまでとします』
『以上が大きく改訂されたところっすね。それ以外は去年と変わらないっす。それではみなさん!明日から始まる黒闢祭!そして、この後に行われる前夜祭をどうぞ楽しんで行ってくださいっす!』
『それでは、これより黒闢祭を開催いたします!』
勢いよく放たれた声とともにこの開会式のためだけに集まった観客、生徒たちは大いに盛り上がった。
________________________________________
「おー、シン。やっと来たか」
「みんなすまん。会議から直で来たら実行委員長にに呼び止められて前に立たされてた」
「見てましたよ。すごく顔から乗り気じゃないのが伝わってきました」
「そんなにだったのか」
「それにしても、戻ってくるのが前夜祭だとは思ってなかったわ」
「俺もだ。シンのことだから事をパパッと済ませて戻ってくんのかと思ったぜ」
「そんなに完璧超人だったらいいんだがな」
「まあ今は楽しもうよ!明日からは敵同士なんだし」
「そうだな」
そして、4人はSDの皆んなと談笑しながら食事をしていた。時折、他校の生徒が挨拶に来たりした。
「よう、シン。久しぶりだな」
「やあ、久しぶりだね。
「まだ精霊には認めてもらえてないようだがすぐに認めてもらってお前に追いついてやるからな」
「うん。楽しみに待ってるよ」
シンは爽やかにそう返すと篤人と呼ばれた男は意気揚々と肩で風を切りながら歩いて戻っていった。
「ねぇ、なにあいつ。シンの知り合い?」
「ああ、黄機の国の現国王黄聖院源内の息子、黄聖院篤人だよ」
「なんか、すげぇシンに対抗心燃やしてるみたいだったな」
「ああ、なんか源内さんが篤人が子供の頃から俺の自慢をしすぎて俺のことが気に入らないらしい。悪いやつではないんだがな」
「面倒な事にはならないといいんですけどね。というかシンさん、さっきセブンス獲得おめでとうとか言ってませんでしたか?あの人もセブンスを?」
「そうだぞ。あれでも一応国王の息子だからそれなりにセンスもあるし強いぞ」
「い、一応なのね」
と、雫は言いながらも内心複雑なんだろうなと思う。自分にもセブンスを手に入れられるチャンスがあったのに先を越されて獲得されてしまったのだから無理もない。
「雫。セブンスは持ち主を選ぶからまだチャンスはあるぞ」
「し、シン!?」
心の内を見透かされたからか、顔を少し赤らめ手をブンブン振る。
「雫って、意外と分かりやすいよな。なんつーか、動きがうるさくなる」
「動きがうるさいとかゆーな!」
前夜祭は大いに盛り上がり他校との交流もありどの生徒からも充実したものとなった。
明日からは黒闢祭。どの生徒も胸に秘めている思いは1つだ。
「舞、涼香、優勝するぞ」
「うん」「はい」
3人は拳を合わせ、そして、小さく笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます