凱旋、そして新たな戦いへ
「おー、シン。退院おめでとさん」
「いやー、心配かけたかな」
「かなじゃないですよ、シンさん」
「そーだよシン!すっごい心配してたんだからね!?」
「はは、悪かったって。あ…」
「ん?どーした?シン」
「あー、いや、何でもない」
「えー、ちょっと気になるじゃんシン。言ってよー」
「いや、今日発足式と同じところで色々あるから覚えいてって言おうとしたけど舞に言われてるの思い出してさ」
「ホントかなぁ。まあいいけど」
4人でいつものように
『牙龍院シン、牙龍院シン。至急、理事長室まで来なさい』
との事。
「お?呼び出しか。理事長室かぁ…行きたくねぇなぁ」
「何言ってるの!?」
「シンさん行かないとダメですよ?」
「そうだぞ。シン」
そしてまた放送がかかる。さらに酷くなって。
『シンくーん?放送聞いてるでしょー?そろそろ来てもいい時間だと思うのだけれど。来ないのはどうしてかしら?』
シンに視線が集まる。
「わかったって。行くよ」
そんなこんなでひと段落を終え平和(?)な朝が始まった。
「シン君遅いじゃなーい」
「すいませんね。理事長もとい白夜
「うん。よろしい」
「で、何の御用でしょうか?」
「舞から色々話聞いちゃったよー?シン君怒ったんだって?」
「まあ、そうなりますね」
「全く…いい?シン君。あなたのオーバーフローはみんなとは違うの。無闇に姿を晒して力を発揮すれば国を動かさないといけないかもしれないのよ?」
「重々承知してるつもりなんだけどね」
シンは苦笑を浮かべながら肩をすくめる。
「じゃあ、今回の戦いについて報告してね。理事長の私には毎回うちの学校のランキング1位が報告することになってるから」
麗さんは情報カモンと言わんばかりに手をひらひらさせる。
「あの、麗さん。まだランキング発表されてないんですけど。大丈夫なんですか?」
「あ…。えっと、まあそのうち発表されるし遅いか早いかの違いだし大丈夫でしょ」
「相変わらず適当だな」
「それじゃ、報告報告」
シンは短く息を吐き、報告をする。
「今回、軽傷者12名、重傷者2名、死者……一名」
「うん、なるほどねぇ。一人死んじゃったか。その子は例の女の子かな?」
「ああ、裏切り者ってことになるな」
「
「そうだよ」
「動機は分かる?」
「さぁ?そこまでは分からないな」
胸元でチャリッと揺れるペンダントを見る。
「そういえば、アクセサリー許可を貰いたいんだった」
「アクセサリー?あぁ、黒鉄家の。うん。いいよ。後で渡すね」
「しっかし、なんでアクセサリー付けるのに許可がいるのかねぇ」
「シン君のご先祖様に聞いたら?どうせ頭固そうなことしか言わないわよ」
と、ぞんざいに言った後、手をパンと叩いた。
「じゃあ、もう良いよー。この後のSDのやつ頑張ってね。シン達が打ち立てた一つ目の伝説をみんなが見てたんだから、シャキッと凱旋して来なさい」
「一つ目の伝説って何個もあるのかねぇ、これから。ほんと勘弁してくれよ」
そう愚痴をこぼしてシンは理事長室を後にした。
「そうだね。シン。君たちは激動の時代のなかにいるの。それを終わらせるのは…きっと、あなたとその周りの子達なのだと、私は思うわ」
そして、白夜麗は顔を少し歪め、小さく呟く。
「あなた達が色々なものを失うところはあまり見たくないのだけれど。それでも、前に進まなくちゃいけないのよ」
________________________________________
「SDのみんな集まったー?」
舞を筆頭にSDメンバーが並んでいる。
「全員いるね。じゃあ、行こうか!」
『おう!』
「おおおぉぉぉーーー!!」
SDメンバーの入場とともに上がる大きな歓声と拍手。これだけ期待されていたということが身に染みて伝わり、雫と涼香と煉は目を輝かせている。
舞が中央の教壇に立ち、手を挙げ場を沈めた。
「皆さん。我々は勝利しました」
そう告げる舞だが、いまいち場が盛り上がらないのはSD全員の顔が明るくないからか。そして、その雰囲気を察した舞は淡々と告げる。
「今回の戦いで我々は死者を出してしまいました。名を
この学園の全校生徒を収容できるほどの大きさを誇る講堂が真空の中にいるかの様に音のない世界へと引きづり込まれる。
だが、舞は続ける。
「ですが、彼女の死は無駄にしてはいけない!彼女は死に際に謝罪して、後悔して、感情を吐き出して、感謝して、想いを告げて、笑って死んでいった。私は、何度か戦場に赴いたことがあるけど、あれほど綺麗な死に方をした人は初めて見た。彼女はこの戦いで最も尊ぶべき命だったと、私は思う。だから!これ以上、大切な人を、大切な仲間をなくしてはいけない!我々はもっと強くなる!そして、大切なものをもう二度と失わせる事のない様に努める!強くなることは決して簡単なことではないけど、みんなが力を合わせて手を取り合って一歩を踏み出せば必ず大きな力になる!だから頑張ろう!自分の大切なもののために!」
そういうと、舞は手を突き出し
「勝つために剣を掲げろ!守るために盾をかざせ!負けてもいい!泣いてもいい!また歩みだせばいいだけだよ!」
勢いに圧倒されていた全生徒が我に帰り、期待にあふれた面持ちで剣を掲げる。
「私欲のために戦うか!?虐げるために戦うか!?我々は、違う‼︎未来のために!希望のために!共に、強くなろう‼︎‼︎」
「「「「オォォォォォォォォォォーーーーーーー」」」」
舞の言葉に奮起する全生徒の雄叫びと意志が今ここで一丸となる。舞はくるっとシンの方を向き無垢な笑顔で笑うのだった。
「シンー、ちょっといいかな」
「んー、何?どしたの?」
「今度の
「あぁ、いいぞー。でも、黒闢祭は参加条件は3人1組じゃなきゃいけないんだよな?あと一人どうするの?」
「そうなんだよねぇー。あと一人花奈誘おうと思ったんだけど、断られちゃって」
「あー、多分舞を倒したいんだよ。花奈、ああ見えて結構根に持つタイプだよ」
「ほんっと、
「めんどくさいゆーな」
だらだらと椅子に腰をかけながら話しているとひょこっと涼香が現れた。
「シンさん」
「おー、涼香。お疲れ様。どーした?」
「シンさんと白夜先輩は一緒のチームで出るんですか?」
「うん。そうだよー」
「じゃあ、もう一人枠が空いてるってことですよね?」
「ああ、そうだ。今そのあと一人で悩んでるところだったんだが。もう必要なさそうだな」
涼香の目が若干キリッとしてる時は何か願い事がある時だとシンは入学した時から今までにかけて学んだことだ。
「はい。私を白夜先輩とシンさんのチームに入れてもらえないでしょうか」
シンと舞は目を合わせ、そして少し笑う。
「うん!いいよー!よろしくね涼香ちゃん」
「はい。よろしくお願いします」
「よし!じゃあ優勝目指して頑張りますか」
「おーー!」「はい!」
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「
「また荒れてるわね。あの学校なんだからいつものことじゃない」
「もう我慢の限界だ。今年こそあの学園の生徒を叩き潰す」
「血の気が盛んだこと」
「お前は、あのいけ好かない学校に話題も名声もかっさらわれていいのか!?」
「んー、まぁ私の生徒たちが劣って見られるのは少し
「だろ?だったら、お前も協力しろ!」
「はいはい。でも、私は最小限の協力しかしないわよ?」
「あぁ、それでいい」
髭を生やした筋骨隆々な男は遥か遠くシンたちのいる学校の方を向き確かな敵意を向けて呟く。
「待っていろよ。必ずそのでかい面に恥をかかせてやる」
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