夢
全てを飲み込む
どこに居ても目を覆ってしまうような
静寂の中
どこか懐かしさを覚えるような風の吹く草原。
天を穿つ
全てを消し去る白き破壊者。
虚無を感じさせる
その全てを見た時、必ずシンは眠りを覚ますのだった。
「花奈ー。起きろよー」
「んー、もうちょっとぉ〜…」
これが大体三、四年は続いているだろう。そんなシンには秘策がある。朝、花奈を確実に起こし自分にデメリットがない起こし方。
「花奈。今起きたら飯多めにしてやるぞ」
「んんっ〜!起きるぅ〜」
チョロい。ちなみに、これで起こして飯を多くした事は一度もない。
「それじゃあ、俺は行ってくるからなー。ちゃんと鍵は閉めてくれよ」
「ダイジョーブー、私が鍵掛けなかった事ないでしょー」
「いや、むしろかけないほうが多い気がするけどな。んじゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃーい」
シンは玄関を出ると雫がそわそわした様子で待っているのが見えた。
「おはよ、雫。朝早くからどうした?」
「あ、あのね」
そうして、話が切り出された。
「今日さ、夢…見たんだけどさ。シンなら分かるかな…って」
「どんな夢?」
「なんか私よりはるかにでかい亀がいて、話しかけてきたの」
「亀ねぇ…。それで?」
「うん。なんか話したと思うんだけどなんかあんまり思い出せなくて。それですごく眩しく光ったと思ったら目が覚めてた」
「んん〜〜」
シンは唸った後、熟考した。
(夢か…。正体は大体わかる。が、今、グラビティ・ゼロという
「えぇーっと、シン?」
「ん?あぁ、ごめんごめん。少し調べさせて」
「うん、わかった」
雫はにこやかに笑いながら答えた。
「でも、でっかい亀の夢。なーんか、現実味があったんだよなぁ。不思議なこともあるもんだね」
「でかい亀の夢が現実味を帯びてるなんて怖い話だな」と、シンが笑いながらいうと「言えてる」と笑いながら返す雫だった。
そして、遥か上空でシンと雫の話を何者かが盗み聞きしていてシンの判断が正しかったことを知る者は誰もいないのだった。
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「おー、シンと雫じゃん!よっ」
「おはようございます。シン、しーちゃん」
「おはよ、2人とも」
「おはよー、相変わらず軽い挨拶だね、煉」
「そうですね、女をコロコロ変えそうな軽さです」
「確かにな、想像できる」
「3人とも朝からキツイぜ…」
ホームルームが始まるまで基本的に煉へのいじりで潰す。
すると、「シンさーん」と声がした。声の主を見てみると
「少し行ってくるわ」
4人の輪から離れるとさつきの元へ向かった。
「あの、この間はありがとうございました」
「いやいや、こっちこそありがとな。楽しかったよ」
「私も楽しかったです!あ、あの、ネ、ネックレス似合ってますか?」
恥じらいながら上目遣いで聞いてくる。
(いや、上目遣いは卑怯だよ)
「うん、よく似合ってるよ」
平然を装いながら笑顔で返した。実際は女子に何かをあげた試しがなかった(花奈は除いていいよね)ので結構嬉しかった。
「ほ、本当ですか!それは…よかったです」
恥じらいながら言ってくる。
「あ、ああ、うん。よかった」
冷や汗を流しながらシンは引きつった顔で返す。というのも、彩月は顔がびっくりするくらい整っていて男子からの絶大な人気を誇っている。故に、シンへの視線がとてつもなく痛い。
運良くそこで予鈴がなってくれたため「じゃあ」と、簡単に挨拶を済ませ戦略的撤退に移った。視線が痛すぎる。なにあの空間。汗腺が開きっぱなしだわ。
「おー、シン。おつかれー
「まじか。サンキュ」
煉ってこんなにいいやつだっ…
「いいってことよー。で、なに?シンとあの子付き合ってんの?」
ニヤニヤした顔で聞いてきた。雫や涼香まで聞き耳立てている。前言撤回。俺は何も言いかけてない。
「はぁ。付き合ってねーよ」
「そうですかねぇ」
「絶対向こうは気があるよ」
「だよな!絶対シンのこと好きだって」
ノリノリな煉の横で難しい顔で見合わせている雫と涼香。
「はーい、席着けよー、おめーらー」
やや強気口調な女教師の声が教室に放たれた。
そして、本当に冷静になって今朝雫から言われたことを思い出した。
目を閉じてこの日2回目の熟考をする。
(夢。人より大きい亀。光。現実味を帯びていた。これが雫の証言だ。それじゃあ足りない。おれの夢はどうだっただろうか。夢。さまざまな現象。7つ。つまりセブンス。全ての幻獣が俺の夢に出てきた理由。そして、雫が今日その夢を見なければいけなかった理由…。雫?雫だけなのだろうか。ならば俺の夢に介入してくるのは1つの現象でいいはず…)
シンは顔を振り上げ、煉たちを見た。色々な方面から話し声が聞こえる中、シンが思い当たった答えは
(近々、全員が力を欲するような何か…つまり…戦争が起こる)
ホームルームが終わるとシンはみんなに満を辞して聞いた。
「お前らさ、夢…見なかった?」と
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