黒鉄彩月との休日
舞たちに例の魔術の報告をしてから二日たった今、まだ何も起こらずにいた。
そして、俺は今、私服を着て駅の前に立っているわけだが、
「遅くないか?まあ、女子なんてそんなもんか?花奈は…あれは別だな」
「シンさーん」
今日は黒鉄彩月と過ごす、シンとしては珍しく用事のある休日だった。
「それじゃあ彩月が行きたいところ行こうか」
「ショッピングに行きたいんですけどいいですか?」
「ああ、構わないよ」
すると黒鉄彩月はニッコリ笑って歩き始めた。
「シンさん、シンさんって彼女とかいないんですか?」
「彼女?いないなぁ。ていうか出来たこともないよ」
「え!シンさん結構人気あるじゃないですか!」
「あぁ、まあ人並みに告白されたりしたかな」
「そうじゃないと顔面偏差値が普通くらいの人が可哀想ですよ。例えば私とか私とか私とか」
「彩月しかいねーじゃねーかよ。あと、俺のことはシンでいいぞ?なんか『さん』とか付けられると変な感じするからな」
「そ、そうですか。分かりました。これからシンと呼びますね」
「あと、その敬語もどうにかならないかな」
「これは癖なので誰に対してもこうなってしまうんです」
「そうか、じゃあ無理に変えなくていいよ」
「そう言って頂けるとありがたいです」
と、とりあえず普通の会話の形が決まると彩月が足を止めた。
「そうこうしてるうちに着きましたね」
「ああ、で、俺は何すればいいんだ?」
「そうですね。私が服を選ぶのでそれが私に似合ってるかどうか見てください」
「了解した。でも、あんまりいいこと言えないけどいいのか?」
「いいですよ。私のわがままなので」
「そっか。了解」
そして、建物の中に入り、彩月がいつも行っているという店に着いた。
「それじゃ、回りましょうか」
「そうだな」
「シン!あれなんてどうでしょう!」「シン!これどうです?」「シン!あっちも行きましょう!」そして、時間は経ち、彩月の買い物も無事終わった。
「なんか、すごい振り回しちゃいましたね、シンのこと」
「まあ、うちのバカは『これにする〜』とか言って速攻で決めるからこんな長いことなかったからなぁ、少し疲れたかもだな。でも楽しかった。」
「すいません…。楽しんでいただけたなら幸いです」
「あと、これ。今日楽しませてもらった分のお返しだな」そう言ってシンが彩月に細長い箱を差し出した。
「い、いえ、そんな私の方こそお礼をしたいのに」
「いいから、受け取ってくれ」
「うぅ〜、申し訳ないです。じゃあ、今度またどこかへ一緒に行く機会があればその時にお返ししますね」
「おう。期待してるよ」
「開けてもいいですか?」
「ん?ああ、構わないよ」
そして、彩月が箱を開けると1つのネックレスが出て来た。
「わぁ、青い月だ。綺麗…。本当にもらっていいんですか?」
「ああ、もらってくれ」
「ありがとうございます!!宝物にします!」
「あはは、ありがと」
そして、彩月はそのネックレスを大切そうにしまい、カバンの中へそっと入れた。
「それじゃあ、もう遅いので帰りましょうか」
「送って行こうか?」
「いえ、これ以上はシンに申し訳ないので遠慮しておきます」
「そうか。じゃあ、また学校でな」
「はい。また学校で。」
そう、彩月が言うと小さく手を振った。シンは、それに答えるように手を振る。
「ネックレス、大切にします…」
シンには届かない音量で言ったその言葉に悲しく、どこか切なげな色が混じっていることは彩月以外に知る者はいない。
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