注目
『これにて公式模擬戦 《
『本日はお疲れ様でした〜。お越し頂いた方々もお疲れ様でした。本当はカンペを用意してたのですがつかいものにならなくなっちゃいました』
会場に笑いが起こる。花奈はうまくやっているようだ。
『えー、今日私は今までで1番興奮した模擬戦でした。赤谷煉、黄埼雫、青矢涼香、そしてシン。この4人は逆境に立たされても決して挫けず最後まで粘って勝ちを掴みました。この4人と戦った二、三年生は手を抜いていません。全員全力。その中で勝つことは大いなる前進です。本当にお疲れ様。そして、楽しい試合をありがとう。以上でしゅ。』
あ、噛んだ。by会場全員。
『い、いい、以上ですっ!!』
「変わんねーな」
「花奈はあーゆー方がいいよ」
「わからんでもないな」
ははは、と笑いながら返す。
「シン、これから忙しくなるよ〜」
「え、なんかあんの」
「ヒントはぁ〜、外、だね」
「外?」
その言葉でふっ、と入場口に目を向けると目をギラギラさせてカメラを構えてる人たちを見つける。
「あはっ、気付いちゃった?」
「マスコミか…」
「そーそー、大正解だよ。毎年大変なんだよなぁ〜。あ、そろそろだよ。とりあえず私を医務室に連れてってねー」
「ハイハイ」
ため息混じりで返事をするとマスコミの濁流をかき分けて勝利を誓った3人が走ってくる。
「やったね!シン!」
「おめでとさん!これで俺らは晴れて勝利だぜ」
「やりましたね、シンさん。かっこよかったですよ!!」
「あ、そうそう。ねぇ、シン。セブンスの件後でじっくり聞かせてもらうからね」
「あ、え、えーっとぉー、目が笑ってないのは気のせいでいいのかな」
「ま、まあまあ。雫、落ち着け。シンも悪気はなかった訳だし、な?」
「まぁー、勝ってくれたから許す、おめでとう、シン!」
「おう」
『すいません!一年生の4人の勝者の方々、一言お願いできますか!』
『こちらに向いて写真をお願いします』
『牙龍院シンさん、ランキング1位の白夜舞さんに勝った感想は!?』
「た、大変だな」
「じゃ、一年生の諸君頑張ってねー」と舞は部屋に逃げた。後で肋骨もう2本くらい折りに行きますね。
“一時間後”
「やっと終わったぁー」
「疲れたねー」
「本当に大変でしたね」
「予想以上だったな。これは疲れる」
やっとの思いで控え室にたどり着いた俺たちは気だるげにソファーに腰をかけた。
「雑誌にも載るらしいね」
「俺、顔変じゃなかった?」
「知らないな」
「あんたはいつも変よ」
一息ついたと感じさせるいつもの会話に戻った。
「今日のところは解散にするか」
「そうですね。みなさん疲れてると思いますし。私はいいと思います」
「そうね、私も疲れたわ」
「ははは、そうだな。じゃあお疲れ〜」
煉が言うと寮に住んでいる煉と涼香はすぐに別れ、家の方向が大体同じである俺と雫は帰路をたどっていた。
「今日のシンはすごかったね。それにセブンスを持ってるなんて聞いてなかったからなぁ〜」
「嫌味丸出しだな。別に隠して置こうと思ったわけじゃないんだけどなぁ」
「それにシンってあーゆーマスコミとか慣れてると思ってたんだけど意外とそうでも無いのにも、びっくりしたかな」
「まあ、あんな感じで押しかけては来なかったからな。あってもインタビューみたいな場を設けられてそれに回答していくだけって感じだったし」
「あー、なるほどね!それにしても、今思い返してもすごいよ。ランキング1位の白夜舞先輩を負かしたのは、白夜先輩が高校入学してからシンだけだってさ!」
「らしいな。舞のくせに」
「あはは。酷い言い草だね」
あはは、と笑うと「あっ、そう言えば」と雫が言う。
「ところでさ、白夜先輩のことを舞って呼び捨てにしてるけど仲いいの?」
「うちの姉がランキング2位でさ、舞の補佐みたいなやつをやってんだよね。それで仲良くなってたまにうちに来てたんだよ。そんで、仲良くなった」
「へぇ、じゃあシンのお姉さんも強いんだ」
「まあ、俺は負けたことねーけどな」
「自慢ですか。そうですか」
「ごめんって」
2人は笑った。
「それじゃ、私ここだからじゃあね〜」
「おう、また明日な」
手を振って別れると背後から走ってくる気配がある。まあ、あらかた予想はついている。
「シーーーーンっ」
「やっぱりか」
「え、何。何がやっぱりなの」
「いいよ。花奈に言ったら理解するのに数年かかるから」
「えー、あ、そうそう。シン改めておめでとう」
「おう、ありがと」
「それにしても意外だなぁ〜。舞ちんが勝つと思ってたんだけどなぁ〜」
「ハッ、
「うるさい!バーカッ」
あはは、といつものようにふざけながら帰る道のりは…
「まぁ、悪くはないか」((ボソッ
気が付いたら赤く染った空に本音が漏れる。
「ん?シンなんか言った?」
「いや、なんでもねーよ」
「なんでもなくないぃーっ」
「あー、もううっせぇな、この能天気天然バカ女」
「能天気と天然は合ってるかもだけどバカは違うもん!」
「はいはい、バカな奴はそー言うんだよ」
そんなやりとりに夢中になっていたらいつのまにか家を通り過ぎていた2人であった。
「「
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