初陣〜青矢涼香〜
無事雫までSD入団権を手に入れた。そして、涼香の出番も刻々と迫っていた。
「涼香ぁ〜、頑張ってね!!」
「俺たち全員でSD入団するんだからな」
「そーゆーのはプレッシャーだからやめてやれよ」と、いつもの様に話をしているが完全に涼香は集中していた。
「これは、何を話しても返って来なさそうね」
「まあ、仕方ないな」
「にしても、この集中力はすげぇわ」
青矢家は、名の通り弓の名家だったな。ただ、魔法が発展して弓が衰退してからは、ただ切るより何倍も集中力が必要な受け流しに重点を置いていて、先々代は親父が流麗と褒めていたか。
でも、普通じゃないと言わざるを得ないほどの集中力である。自分のアナウンスにも気づかないほどに。さすがにそこは気がついて欲しいところではあるが…
「出番だぞ」と耳元で告げた。そして、無言で立ち上がる。
「行ってくる」
そう言い残してスタスタと歩いて行った。
『さぁー、試合も終盤にさしかかって参りました!!次の試合は青矢涼香さんVS
「青矢涼香です。よろしくお願いします」
「はっはっは、そんな華奢な体で立ち向かうとは。大いに結構!」
「ンー、微妙だな」
大笑いして余裕でいる緋口剛史を見て、どちらが勝つとは決められない。
「何が微妙なんだ?」
「涼香の家は受け流すことを得意とする家だ。対して、あの緋口先輩は容赦なく猛攻を仕掛けるだろうな」
「そうね。涼香がどれだけ先輩の剣技をさばけるか、勝敗を分けるのはそこね」
「そうだな」
煉も納得したようで雫の意見に相槌を打つ。
うまく行けばいいが…と言いかけたが不安にさせるのもどうかと思うのでやめておこう。
『さぁ、両者出揃いましたぁっ!それでは参りましょう。バトル〜〜スタァーーートッ!』
「始まりだ。お嬢ちゃん悪いが勝たせてもらうぜ」
緋口剛史が地面を蹴ると高速移動とも言える速さで間合いを詰めた。
剣を合わせた。が、甲高い金属音はなることはなくギャリッ、という音がなる。そして、「ハァッ!」という見た目には想像できない声をあげ逆手に持った刀を横に薙いだ。
すかさず、緋口は受け流された勢いのまま離脱を図った。
「経験値が違いますね。これはだいぶめんどくさそうです」
「奇遇だな。俺もめんどくさいと思ったところだ。」
そう言って2人はニッ、と笑うと少し空いていた間合いが一気に埋まった。
ギッ、ギャリッ。シィーーン。キッ、ギギッ。
「防戦一方だな」
「涼香大丈夫かな」
「
そんなに険しい表情をしていたのだろうか。
俺の顔を見て煉と雫が押し黙った。
「涼香頑張って!」
雫は観客席から立ち上がって叫ぶ。
「結構できるじゃねーか。だが、そろそろ集中力切れてきただろ」
「そんな、こと、ありません!!」
深呼吸をして刀を中段に構えた。
「行きます。《
「なんだ?その水の槍は」
「魔力が練りこまれた超純水です」
「シン!なんにあれ!」
「あれは確か《
「でも、小さいけど大丈夫なの?」
「まあ、こんな所で魔力を練りながら超純度の水をあれだけ生成出来たことだけでも凄いことなんだけどな」
「それもそうだけど」
「いや、違うな。あの大きさであの疲れ様はありえないもっと面白いものが見れるかもしれない」
「えぇ?じゃあもっと作ってるってこと?」
「でも、どこにあんだよそんなん」
「それはおそらく…」と言って涼香を見ると、目があった。
「流石はシンさん。もう気づいたんですね」
「あ?お前何言ってんだ?まあいい。そんなちっぽけな槍で止められるもんなら止めてみやがれぇぇ!《緋剣》!!」
緋口の剣から火が上がった。
「まずは鎮火しましょう」
涼香が静かにそういうと超純水の槍が加速した。
「こんなもの避ければ何も問題はない!」
「それはどうでしょうか」そう涼香が言うと全速力で直進していた槍がそのままのスピードで曲がった。そして、刀に着弾すると水の輪が2つでき刀を縛った。
「なんだこの水!炎が出なくなったぞ!」
「魔力が練りこまれてるって言いましたよ。あ、後、その金生水には触らないほうがいいと思います。手が溶けますよ」
「は!?ど、どうすればいいんだよっ!」
「大丈夫ですよ。もう解けます」
まずいと思ったのか緋口が最初に見せた高速移動を発動し、涼香との距離を詰める。
「させません。私はみんなの為にも勝たないといけないんです」
右手を勢いよく振り下ろすと天から金生水の槍が降り緋口を阻む。
「ぬぅっ!」
「行きます!」
魔法陣と化した金生水に左手を触れ、右手を柄に置く。
「青矢流陰陽術居合の型第二奥義 金海王破!!」
涼香が構えた刀に纏い始めた。
そして、「行きます」と静かに言うとすぐに決着がついた。
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