初陣〜黄崎雫〜

『さーて、いよいよ後半に入って参りましたぁー。いやぁー、水間みなまさん今年の『No.』は白熱していますね』

『そうですね!今の所勝ち上がっているのは赤谷煉、黒木伶奈れな紫季しき隼人はやとの三人だけですからね。去年より一年生の下剋上が激しいですね。』

『はい!この後の戦いも見逃せません!さぁ、次は黄橋きばしみのりさんVS黄崎雫さんでーす』


「よ、よろしくお願いしますね。黄崎さん」

「ええ、こちらこそ」


『さあ、第9回戦!!バトルーー、スターートですっ!!』


「いっくよーー」


勢い良く雫は黄橋の懐へ潜り込んだ。


「もらいっっ」


刀を逆手に持ち首元へ滑り込ませる…が、そこにはもう黄橋の姿は無かった。


「黄崎さんはとても速いんですね。でも、私も負けられないので全力でいかせていただきますね」


黄橋は剣先で六芒星を描く。


「【ライトニング】」


雷槍が5つ。煌々と輝きながら黄橋の頭上を浮遊している。


「決めさせてもらいます!!」

「!?」


雫に向かって3本の雷槍が加速してゆく。雷の如く空中を翔る雷槍は雫の元へと進んでいく。そして、雫に突き刺さった。


『おおーっとー?これは通ったか!?』

興奮気味の実況が会場に響いた。


「会場全体が釣れるなんて私って演技上手かったり?」

「いいえ、甘いです!」


黄橋は残しておいた二本の雷槍を自分の正面と背後に叩きつける。


「っ!?」


振り下ろされた雷槍は、間一髪踏みとどまった雫の前髪をチリチリと焼く。


「やっぱり速いですね。意外とこの策は通じることが多いのですが」

「いや、正直今のはまぐれかな」

「じゃあ次で!」


「【ライトニング】」


生み出す雷槍は10。今までより明るくそれでいて鋭い。素人でも凄いことはよく分かる。


「ガチじゃないですか」

「私だって勝ちたいんですよ」


困り顔で言う雫に、黄橋はにこりと微笑を返す。


「行って!」


黄橋が剣先を雫に向けると、雫を囲うように雷槍が発射する。


「まだよ。【スプリット】!」

「追加詠唱!?」


____________

「お、おい。シン!あれ、なんだよ!?」

「あれは追加詠唱だな。既に完成している魔法に干渉し更なる変化をもたらすものだ。2年生でこの技術を使える生徒は多くないはずだ。流石は魔術の名家だな。実に興味深い」

「おいおい、大丈夫なのかよそれ!?」

「ん?ああ、これは雫の勝ちだな」

「と、どういうことですか?シンさん」

「まあ、見とけって」


_____________

追加詠唱により10の雷槍が無数とも言える雷のクナイに変化し、雫の元へ着弾。大量の砂埃を巻き上げ威力は普通ではないことを実感させる。


『おおっと!ここで黄橋実さんの【ライトニング】が黄崎さんの元へと炸裂したーっ!』

『砂煙で状況が見えません。勝敗は決したのか!?』


観客全員が息を呑む中。徐々に晴れていく視線の先には、黄橋実の首に刃をから当てている雫の姿があった。


『お、おっとぉぉーー?たった今黄橋実選手の攻撃をもろに食らったはずの黄崎雫選手が後ろからチェックメイトっ!?今、決着ですっ!!』

『こ、これはどういうことでしょうか』


「な、何を使ったの?タイミングは完璧だったはずよ。」

「そうだね。確かに完璧だった。でも、先輩は私が一回目の攻撃を避けた謎を速いの一言で済ませた。それが敗因。あとは私の流派とかも知っておいた方が良かったと思うよ」

「あなたの流派??」

「はい。うちの流派は、魔術系。それもメインは光なんで」

「ど、どういうこと?」


へたりと座ったままの黄橋に手を伸ばし立たせる。


「つまり、私が一回目のの攻撃の時に後ろにいたのは私の像。要は偽物」

「あの時から私が見てたのはあなたの分身ってことね」

「ご明察です」

「完全に引っかかったわ。完敗ね」


そう黄橋実が負けを宣言すると会場が一斉に湧いた。





































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