覚醒
「花奈姉ぇ!」
シンは本も箱も放り出し、花奈に抱きつく。
「シン⁉︎」
花奈はシンが突然現れたことに目を丸くしながら聞いた。
「シンっ。お母さん・・・お母さんは⁉︎」
「お母、さんは、殺さ、れちゃった・・・」
シンが涙で声を詰まらせながら花奈にそう告げた。
「そっか・・・。」
花奈が寂しげに言うと、花奈に付いていた付き添いは牙龍院凛花の死を知り涙ぐんでいた。
「シン。その箱と本は、なに?」
「お母さんに、絶対、渡しちゃ、いけないって、言われ、ただけ・・・。中は、分か、らない。」
「ちょっと見てもいい?」
花奈がシンに聞くと涙を拭きながら黙って頷いた。そして、花奈が箱の中を見た瞬間、花奈が息を飲んだ。
「お母さんが・・・」
花奈が言いかけた瞬間、閃光が飛来する。
「シンっっっ!」
「っ!?」
シンの横腹に衝撃が走る。
ドォォォォォォン・・・
もともとシンと花奈がいたところに花奈の付き添いを巻き込みながら爆発が地面をえぐった。
「シン、大丈夫?」
「うん。でも、みんなが・・・みんなが」
跡形もなく消えたクレーターを指差しながら花奈に訴えた。
花奈は一つ深い深呼吸をして、その無慈悲な砲撃の根源を見つめる。
「シン、今は考えちゃダメ。戦うよ……。シンもお母さんから戦い方は教えてもらってるでしょ?」
「で、でも!武器なんか持ってないよ!ねぇ、花奈姉ぇは平気なの?あの人たちが殺されちゃったのに・・・」
「シン!今は生きるか死ぬか……。大事な運命の分かれ道だよ。シンも死にたくなかったら武器を取りなさい」
花奈は両手を揃え、言葉を紡ぐ。
『天地開闢が訪れる。
風は吹き荒れ、大地は焼かれ、海は干上がり、世界は終焉を迎える。
だが、輪廻は途絶えぬ。再起せよ!毒に犯されようとも癒してやろう。火に炙られても治してやろう。
我は世界を望む者。世界の行く末をこの眼で見届けよう。大いなる神力でその身に命を授けよう!』
そして、花奈はその名を呼ぶ。
「『
花奈が刀を
「シン、あの箱の中に刀が入ってた。それを使いなさい。どちらを使うかはあなたの運しだいよ。」
「でも、花奈
「分かるわ。刀が教えてくれる。あなたを・・・刀が認めたらね」
そう言い残して花奈は敵集団に突っ込んで行った。
「そんな、僕・・・出来ないよ。」
シンは戸惑う。剣を握ったことはある。だが、生物の命を刈り取る。それは、5歳の少年には難しい事であった。
キィィィン…キィィン
「はぁ、はぁ、はぁ、・・・」
花奈は早くも肩を上下させている。お姉ちゃんであってもまだ7歳。刀の加護があると言えど、スタミナは歳相応だ。
「シン、から敵を、遠ざけなきゃ」
息を途切れさせ、シンを気にしながらながら花奈はつぶやく。
「敵、多いな」
自分の周りを眺めながらつぶやく。だが、花奈の周りを囲っている魔物は待ってくれることなんてない。
『オォォォオオォォォォ』
魔物が雄叫びをあげると花奈への攻撃が再開した。
「あはは、これはちょっとやばいかな」
花奈は魔物の攻撃を受けてボロボロになって行く。しかし、攻撃はさらに強まっていく。
『オォォォォォォォォォ』
耳をつんざくでかい咆哮と共に花奈へ決定的な一撃が飛んだ。
「いっ…………」
花奈の右腕には深々と黒い物体が突き立っている。
「っ!!ヤバ・・・ッ」
花奈が後方に大きく吹き飛ばされ、瓦礫に叩きつけられる。
花奈の掠れる視界の中でシンがゆらぁっと立ち上がった。一振りの刀を持って。
「今助けるから待っててよ」
微笑みながら花奈に言った。
胸の鼓動がよく聞こえる。
ドックン・・・
数えられないくらいの魔物が、花奈に向けていた敵意の視線をシンへ移す。
ドックン・・・
『オォォォォォォォォォォ』
この咆哮を合図として魔物がシンに飛びかかる。
「えぇっと、時は満ちた。だったかな」
シンは年齢にそぐわない笑みを浮かべる。そしてシンが一瞬で魔物の向こう側に行くと轟音と強い閃光と共に魔物達は灰になった。
その戦場に立っているのは身長に合わない一振りの刀を携えた。5歳児の姿。
そして、これの出来事は伝説の序章となった。
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