置き土産
隠し扉から続く長い石の階段はゆらゆらと揺れる火に照らされ不気味に映る。
そんな階段を降り続けたどり着くのは両開きのいかにも重そうな扉。
「お母さん、ここは?」
「この部屋は、ガールフの部屋よ。安全なはずだけど多分そんなに余裕はないわ」
そう言うと扉に手を当て軽々しく扉を開けるとガールフの部屋と呼ばれる部屋が姿を現す。母親は少年の手を離し、すぐにガサゴソと奥のいろんなものが積んであるところへ行き何かを探し始めた。
先程までここに来る為に降り続けていた迷路のような階段の遥か向こうから爆発音が響いてくる。少年の母親は明らかに焦り始めていた。そして、本を手に取り少年に渡す。
「シン、その魔法陣の中入って。」
「これ?」
「そう。それよ。後、この本と・・・」
少し考えるように言葉を止めると小さく頷き再び何かを探し始めた。
そして、「あった」と呟くとシンと呼ばれた少年がいる魔法陣の所まで来た。
「シン。この本とこの箱二つは絶対に他の人に渡しちゃダメよ。分かった?」
「分かったよ。お母さん」
すると牙龍院凛花は黙ってそばに置いてあった本を手に取りパラパラとめくり始めた。
「シン、これからはお姉ちゃんの言うことを聞くのよ?」
そして、牙龍院凛花は本に力を流し込む。相当、力を注ぎ込んでいるのか額に汗が浮かぶ。
「お母さん・・・?」
凛花は泣いていた。シンは一度も凛花の泣き顔を見たことがなかった。それ故に困惑を隠すことができない。
そして、転送が始まりだんだん視界がグニャリと歪んできた。
シンは、もう会えなくなるんじゃ無いかと言う不安に駆られ手を伸ばす。
無情にも歪んでいくシンの視界の中で凛花に手が届くことはなかった。そして、灰色のヒト型の生物を確認すると凛花の首が一閃され血が噴き出す。そして、シンの視界にはいつの間にか凛花の面影を残す花奈、そして、その付き添いが荒廃した街の上に座り込んでいた。
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