終末の剣鬼

緋月

秘密

 後世の人間はその日のことをこう語った。


「すべて娯楽に飽きた神々はこう言ったのだろう。『愚かな人間よ。眼を醒せ。世界を臨め。戦争の真っただ中なんだろう?意味もなく睨み合ってないで私たちを楽しませろ』と。そしてそんな中、神々はひとりを指さして笑っただろう。『これは傑作だ』ってね。そして、抱腹絶倒しながら口を揃えてこう言ったはずだ」


『英雄の誕生だ!』と。


_____________________

ドォォォオオオン………


 地と空に鳴り響く轟音が響き渡り、立ち昇る黒煙が天空を覆い、確かな熱を帯びた風がとめどなくあふれ出す。

 頬を撫でる風は、この厄災の壮絶さがビリビリと身体に染み渡らせてくる。


「危ないからこっちに行きましょう。」


 外が喧騒に包まれる中、少年は至極落ち着いた様子の母親に言われるがまま後を追った。


「お母さん、どこ行くの?」


 少年が不安な表情を浮かべる少年は母親を見上げる。


「安全な所よ」


 母親は少年の頭を撫でながら優しくなだめるように言う。

そして、行きついた先は書庫。埃と古い本のにおいが立ち込めていて陽が届かずひんやりとしていたお気に入りのこの部屋もいつの間にか熱気が充満するなんとも居心地の悪い部屋と化していた。


 ずんずんと迷いなく奥に進む母親が一冊の本を本棚から取り出しぱらぱらとめくる。


「我、牙龍院凛花なり。我をガールフの部屋まで導け」


 そうとある一ページに手を当てながら呟くと本棚が軋みだし、階段が現れた。

 少年と牙龍院凛花と名乗る母親は後ろで本棚が元の位置に戻る音を聞きながら長くところどころにしか灯りがない階段をゆっくりと降り始めた。











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