第3話 信長専用宇宙鎧侍
時代は戦国時代なのだが、技術力は現代よりも高く、宇宙にも行けるほどだった。
世界の核戦争に巻き込まれ、地球は放射能に包まれてしまった。
各国は、領土を地球から切り離し、ロケットエンジンで打ち上げた。
人類は、宇宙に出たのだ。
宇宙歴史0年。
人類は、宇宙に出ても戦いを続けた。
新型兵器、宇宙鎧侍を開発して、全宇宙の覇権を争うようになってしまった。
人は、滅びなければ、戦うことを止めないのだろうか?
ここは宇宙尾張。
先日の戦いで、宇宙尾張に、宇宙駿府の今川家の人型ロボット宇宙鎧侍が侵入した。尾張の民と町は、戦争の被害を大きく受けた。尾張も開発した、新型の赤い宇宙鎧侍で対抗。今川を退却に追い込んだ。しかし、1度だけでも、自国での戦いは、尾張の人々に傷跡を残した。
「離れてください。」
信長の乗る新型の赤い宇宙鎧侍が、今川に破壊された町の壊れた家を持ち上げる。信長は町の復旧作業を戦闘に引き続き行っている。
「ありがとう。」
尾張の兵士や民が、復旧作業を手伝っている信長に感謝の言葉を述べる。他の尾張の旧式の宇宙鎧侍も複数、街の復旧作業に尽力している。
「これは、まだまだ復旧には時間がかかるな。」
信長の目には、破壊された尾張の町並みが広がっていた。幸い、主に破壊されたのが中心地だけで、お城戦艦や戦艦ドック、宇宙鎧侍生産工場、食糧庫などは攻撃を受けなかったので、極端なダメージは受けなくて済んだ。被災した尾張の民は、手厚い支給を受けることができた。
「若、若。」
信長に尾張のメカニック兵士から連絡が入る。
「なんだ?」
「若、お疲れになったでしょう。一度、工場にお戻りください。」
「まだ、復旧作業が残っている。」
「我々も新型の宇宙鎧侍データを取るまでは、家に帰れないんです。家族が心配なんです。我々も早く帰りたいんですよ!?」
「わかったよ、そっちに戻る。」
信長は、無線を切る。
「みんな! 復旧作業を頼んだぞ!」
「おお!」
信長は、他の宇宙鎧侍たちに指示をして、宇宙鎧侍工場にロケットエンジンを噴かせて飛んでいく。
ここは宇宙三河。
尾張攻めに失敗した今川氏真は、三河の岡崎城まで撤退を余儀なくされた。宇宙鎧侍を2機も失い、格下の尾張に負けたとなり、氏真の機嫌は、すこぶる悪かった。
「くそ! 尾張如き弱国に負けるとは! これは元康! おまえの責任だ!」
氏真は、敗戦の原因を配下の松平元康に擦り付ける。
「申し訳ございません! 全ては、この松平の性でございます!」
配下の松平元康は、頭を下げて謝るしかなかった。
「何とかせねば! 何とかせねば! 織田に負けたなど、父上に知られたら、どんな酷い目に遭わされるか、分かったものではない!」
氏真は、負け戦の後で気が気ではなかった。
「氏真さま! この松平に宇宙鎧侍をお貸しください! 汚名を晴らす機会を下さいませ! 織田を滅ぼして参ります!」
松平は、氏真の怒りと不安を解消するために、尾張に出陣すると申し出た。
「ちょっと待った!」
その時、新たな武将が現れた。
「おお! 元智か!」
現れたのは、今川家の重鎮の朝比奈家の朝比奈元智だった。
「氏真さま、松平など敗戦の将ではなく、朝比奈家の私にお任せください!」
朝比奈家は、今川家の重鎮で、武将の中では、軍師太原雪斎に次ぐ、大将、朝比奈泰能を筆頭に、ナンバー2の立場だった。
「おお! 朝比奈家が兵を出してくれるのなら、安心だ! 任せたぞ、元智!」
「はあ! ありがたきお言葉でございます!」
氏真は、朝比奈元智に尾張攻めを任せた。
松平と朝比奈は、氏真のいる部屋から出るて、廊下に出る。
「悪いな、松平。おまえなんかには手柄はやらんぞ!」
「私は、敗軍の将。何も言えませぬ。」
「そうか!? ハハハハハ!」
笑いながら朝比奈元智は去って行った。
「・・・。」
おまえなんか、クズは、信長に殺されるがいい。松平は、心の中でそう思った。
「元康さま。」
そこに1人の男が現れる。
「数正か。」
現れたのは松平の家臣、石川数正だった。
「はい、元康さまの指示通り、氏真さまが尾張に破れたと、駿府の義元さまに手紙を出しておきました。」
「そうか。それでいい。ありがとう。」
松平は、バカ息子が勝手に兵を動かした、そして負けたことを、それとなく今川義元に告げ口の密書を贈らせたのだ。
「バカ息子に付き合って、死んでしまっては意味が無いからな。」
「御意。」
松平は、思慮深く時を待っていた。栄えている今川家が衰退していくのを。
「忠次の方はどうだ?」
「順調に宇宙鎧侍の生産を進めています。」
忠次とは、酒井忠次のことである。石川と並び、松平家の信頼のある重鎮である。
「くれぐれも、隠し工場の存在は、今川にバレてはいかんぞ。」
「御意。」
人型ロボットの宇宙鎧侍を独自に開発するだけの技術開発力を、主家の今川に内緒で、松平は隠し持っていた。
「井伊の娘は、どうだ?」
「ただいま、家成が手術中でございます。」
井伊直盛の娘、なおは松平が連れて帰ってきた。現在、数正と同じ、石川家の石川家成が手術をしているらしい。
「そうか、せっかく助かった命だ。なんとかして助けてやりたいが。」
「それにしても良かったのですか?」
「なにがだ?」
「人体に機械を埋め込んでも。」
「人では無くなるかもしれない。だが、それしか、あの娘が助かる道は無い。」
「御意。」
松平の隠し開発技術で、壊れた精神と傷ついた体を治しているという。
「サル、帰ったぞ!」
信長は、宇宙鎧侍工場に帰還した。新型の赤い宇宙鎧侍を所定のデッキに戻し、コクピットから出てくる。
「若、お帰りなさいませ。」
尾張の宇宙鎧侍のメカニックのサルこと、木下藤吉郎が出迎える。
「サル、草履が無いぞ。」
「寒いといけないので、懐で温めておきました。」
サルは、懐から温もった草履を差し出す。
「どうぞ。」
「サルは気が利くな。」
これがサルの思い描くストーリーであった。
「俺はそっちの趣味は無い・・・。」
「ええ!? サルもそんなつもりは無いですよ!?」
「もう言うな。知らなかったことにしておこう。俺の優しさだ。」
「若!? 誤解ですって!?」
しかし、現実は、サルには厳しいものになってしまった。
「それにしても、今までの尾張の旧式の宇宙鎧侍と違って、この新型の宇宙鎧侍はすごいな。性能が違いすぎる。」
信長は、新型の宇宙鎧侍を見上げながら思う。パイロットととして、新型の宇宙鎧侍に乗ったから分かる。今までのどんな宇宙鎧侍よりも高性能だということを。
「まるで俺の手足のように、思うままに動いてくれるんだ。」
また自分の心に反応してくれるように、感情の高まりに応えるように、新型の宇宙鎧侍は、より早く、より強く動いてくれた。
「それはそうですよ。こいつは若専用の宇宙鎧侍なんですから。だって、若を研究して開発したんですから。」
「なに!?」
「あ!? 言っちゃった!?」
サルは、言った後に口を滑らしたと、口を手で塞いだ。
「どういうことだ!? 説明しろ!? サル!?」
信長は、新型の宇宙鎧侍が自分を研究して作られたと聞いて、興味津々である。
「実は、宇宙尾張の宇宙鎧侍は、全て旧式タイプだったの、新型の高性能機を作ろうということになったんです。」
「ふむふむ。」
「そこで、サルにとって高性能と言えば、若でございますので、若の行動、若の言動を研究することにしました。」
「俺が高性能か、サルはうまいこと言うな!」
サルは、さりげなく信長を褒めるのがうまかった。そして、思い描けることは、技術の限界を超えた。新技術開発を成功に導いた。
「若の空け者の凄まじいこと、若の奇抜な行動力を計算すると、例えば、小型のロケットエンジンも旧式の宇宙鎧侍は1つですが、新型は8つになりました。」
「俺の空け者ぶりは、すごいな!」
信長は、褒められているようで、顔が笑顔になってきた。
宇宙鎧侍の背中のロケットエンジン。
織田家の旧式がロケットエンジンは1個。では今川家の普通の宇宙鎧侍は2個。大将機の今川氏真の宇宙鎧侍は3個。
そこから松平元康の独自開発の宇宙鎧侍の高性能を考えると、今川に遠慮すると3個以上はつけることはできない。しかし、ロケットエンジンを2個は隠し装備しているとすると、松平機は、5個は付いていると想定される。
「次に、若が鉄砲を撃ちまくっているのを見まして、新型の宇宙鎧侍には、弓ではなく、火縄銃を実装しようと考えました。」
「俺が撃ちまくって遊んでいたのが役になったな!」
「本来、火縄銃は、1発撃つと整備に時間がかかりますが、そんなことをやってられないので、一定時間のチャージタイムということにしました。」
「サルも良く考えているな!」
信長は、新型の宇宙鎧侍の説明を聞いていて、上機嫌だった。
「高性能は、若を見て新型の宇宙鎧侍の開発に取り組んだら、尾張の開発技術がレベルアップし、高性能機を設計して、生産してみたら、できちゃいました。」
「これも全て、俺のおかげ! ハハハハハ!」
これだけでも素晴らしいのだが、信長をロボットにすると、まだまだ新発想が湧いてくる。
「若、まだありますよ!」
「なに!? まだあるというのか!?」
「空け者システムです!」
「空け者システム!?」
サルは、新機能、空け者システムとは!?
「パイロットの空け者ぶりに反応して、宇宙鎧侍の性能を限界まで引き出すことが出来ます。それは怒りや悲しみ、喜びや楽しみなどの感情の高まり、操縦者の心に反応します。」
「褒められているような、褒められていないような・・・。」
「人によっては、侍魂システムという人もいますけ。」
さすがの信長も、自分のいたずら好きから、そんなにすごいシステムを作られて、少し恥ずかしいので、喜んでばかりはいられなくなってきた。
「空け者システムは、現在、技術の流出もないので、若だけの唯一のオリジナルシステムです。」
「それはうれしいかも。」
信長も自分だけという限定意識はうれしかった。
「あと宇宙尾張の巨大ロケットエンジンや、宇宙鎧侍の燃料ですが・・・。」
サルが、燃料について話をしようとした時だった。
「兄上!」
信長の弟、信行が慌てた様子で駆け寄ってくる。
「あれは、信行?」
信長も弟の姿を確認する。
「父上が重傷です!」
「なに!? 父上が!?」
「兄上! 早く来てください!」
「信行! 案内せよ!」
信長は、父の信秀がケガをしたと聞いて、サルを置いて、弟の信行と共に、父親の元に急いで向かった。
燃料問題!?
ここにきて、大切なことを思いだした。
「くそ!? エネルギーが足らない!?」
「最後の1撃だ!」
「核エネルギー!?」
エネルギー切れで、盛り上がるシーンが描けるのだが、燃料を決めていなかった。
石油? 太陽光発電? 天然ガス? なんか面白くない。次回の燃料問題が出る時までに考えておこう。
那古野城。
織田信長が生まれたお城である。宇宙歴史的に、那古野城は巨大ロケットエンジンを取り付け、宇宙お城戦艦として、宇宙戦争で活躍していた。しかし性能は旧型戦艦である。現在、新造お城戦艦、清州城を建設中である。
ここは父、信秀のいる那古野城。
「父上!」
信長は、弟の信行と共に、ケガを負った父、信秀のいる那古野城にやって来た。
「父上!? 大丈夫でございますか!?」
信長が駆け付けると、父、信秀は布団で寝ていた。側で母の土田御前、妹のお市が看病で付き添っていた。
「騒ぐな! 空け者!」
「すいません。」
母の土田御前は、いたずら好きの信長が嫌いだった。
「信行、ありがとう。」
「はい、母上。」
弟の礼儀正しい信行が大好きだった。
「父上、お亡くなりになるとは・・・。」
信長は涙を流し、父の死を悲しがる。
「勝手に殺すな!」
しかし、父の信秀は生きていた。
「お化け!? 父上のお化けだ!?」
「この空け者め!」
父は、拳で信長を殴る。信長はいたずらをする度に父、信秀に殴られているので、痛い感触が分かる。
「痛い!? 父上! ご無事だったのですね!?」
「はあ・・・。」
この空けぶりが、本気なのか、わざとなのかが父、信秀には分からないで困る。
「ところで信長。」
「はい、父上。」
「おまえに縁談がある。」
「は?」
いきなり湧いてきた縁談話に信長は、ハトが豆を食べたような顔をする。
「美濃の斎藤道三の娘、濃姫との縁談だ。」
信長の縁談相手は、宇宙尾張の北側に位置する、宇宙美濃の大名、斎藤道三の娘であった。美濃は、斎藤道三が内乱を平定し、尾張よりも国力は高く、強国である。
「父上、勝手に決められても困ります!」
信長は、急な結婚話に反発する。
「黙りなさい! これは政略結婚です!」
「政略結婚!? 母上、どういうことですか!?」
信長の縁談は、国のための政略結婚だった。
「殿がケガをされて、ますます駿府の今川が尾張を攻めてくるでしょう。そこで尾張に簡単に攻めこまれないためにも、援軍を出してもらえるように美濃の斎藤と縁組をするのは必然です。」
駿府の今川、甲斐の武田、相模の北条も縁組によって、3国同盟を築いている。
「私たちも縁組で同盟を結ぶのは必然です。」
母、土田御前の言うことは、戦国時代では、普通のことだった。
「信長、あなたは織田家の長男なんだから、政略結婚しなさい!」
「はい、母上・・・。」
信長は、母が自分には冷たいのが悲しかった。こうして信長と斎藤道三の娘の濃姫とのお見合いが決まった。
那古野城から信長が帰ろうとする城門。
「ああ、政略結婚か、自分で結婚相手も決められないとは、情けない。」
信長は、暗い気持ちで下を向きながら歩いていた。
「信長!」
妹のお市が信長に向かって走ってくる。
「お市、どうした?」
「信長が落ち込んでいたので、励ましに来ました。」
「いいかげん兄上と呼べ、兄上と。」
「呼び方などで人の価値は決められないのですから、気になさいますな。」
「お市に慰められるようなったら、俺も終わりだな。」
信長は、まだまだ政略結婚のことや、母上の冷たい言葉に心を痛めていた。
「信長、つまらないことは気にするな。嫁いでくる濃姫の方が不安なんだから、信長がしっかりしないとダメでしょ!」
「お市。」
「空け者は空け者らしく、しっかりやってね!」
信長は、お市に好き勝手言われたのだが、どんな時も自分は自分だと諭された。
「そうだな。俺のできることをやるよ。」
「それでこそ、信長よ!」
「ありがとう、お市。」
「はい、兄上。」
「ハハハハハ!」
兄弟で楽しく会話をして、信長の心は和んだ。
ドカーン!
その時。宇宙尾張の外壁の方で、爆発音がし、宇宙尾張全体が衝撃で揺れた。
「キャア!?」
「大丈夫か!?」
衝撃で体のバランスを崩すお市を信長が支える。
「今川だ、また今川が攻めてきたんだ。」
信長は、直感で今川が攻め込んできたと理解した。
「お市は、ここで大人しくしていろ!」
「お兄ちゃん?」
「俺が、やっつけてやる!」
信長は、今川と戦い、倒すつもりである。
「馬を借りるぞ!」
信長は、近くにあった馬に乗る。
「はいや!」
尾張の宇宙鎧侍工場を目指して、馬を走らせた。
ここは、宇宙空間。宇宙尾張の外壁。
「弱い、弱すぎる。」
尾張の旧式の宇宙鎧侍が1機爆破させられた。
「氏真さまや、松平は、こんな弱い終わりに負けたというのか?」
今川のオレンジカラーの武将クラスの乗る宇宙鎧侍がいる。肩には、朝比奈家の家紋、左三つ巴がデザインされている。
「この朝比奈元智が、宇宙尾張を制圧してくれるわ!」
今川氏真に出陣を許可された、朝比奈元智が普通の足軽タイプの宇宙鎧侍を2機を引き連れて、宇宙尾張に攻めてきた。
ここは、宇宙尾張の宇宙鎧侍生産工場。
「サル! 俺の宇宙鎧侍を出すぞ!」
信長は、馬で駆け付けたので、早くたどり着くことが出来た。
「若、準備OKです!」
サルこと、メカニックの木下藤吉郎は答える。
「よし!」
信長は、宇宙鎧侍のコクピットに乗り込む。
グイン!
信長は、宇宙鎧侍を起動させる。
「信長専用、宇宙鎧侍、出陣する!」
信長の赤い宇宙鎧侍は、宇宙鎧侍生産工場から、飛び立ち宇宙を目指す。小型のロケットエンジンが8個付いているので、躍動するようなハイスピードで、宇宙空間への出入り口を目指す。
ここは宇宙空間。
ドカーン!
今川のオレンジカラーの宇宙鎧侍が、また尾張の旧式の宇宙鎧侍を大破させた。
「旧型のくせに、数だけはあるな!?」
朝比奈元智は、外壁の尾張の守備隊に苦労していた。
「そっちはどうだ? 宇宙尾張の中に入れそうか?」
「元智さま、出入り口は、守備隊が籠城をしていて、弓を撃っていますが、どうにもなりません!?」
「クソ!? 尾張が、こんなにも堅固だったとは!?」
朝比奈元智は、自分が慢心して、尾張を弱く見ていたことを後悔した。
「ギャア!?」
その時だった。朝比奈元智の無線に、部下の悲鳴が聞こえてくる。
ドカーン!
何かが爆発する爆発音が聞こえてきた。
「なんだ!? どうした!?」
朝比奈元智は、なにが起こったのか理解できない。
「尾張の新型の宇宙鎧侍・・・ギャア!?」
もう1機の今川の普通の宇宙鎧侍のパイロットが、朝比奈元智に無線で連絡をしようとするが、連絡途中に、もう1機の今川の普通の宇宙鎧侍のパイロットも悲鳴を上げる。
ドカーン!
朝比奈元智は、この爆発音は配下の宇宙鎧侍が、尾張の宇宙鎧侍に倒された音だと理解する。
「い、いったい何が怒っているというのだ!?」
爆発音は2回あった。ということは、引き連れてきた2機の宇宙鎧侍は倒されたことになる。朝比奈元智は、不思議だった。自分は天下の今川家の名門、朝比奈家の武将であり、弱小国の尾張如きに、今川と戦う戦力は無いと、今川が負ける訳はないと思っていたからだ。
ここは宇宙尾張の中と外をつなぐ出入り口。
「やったぜ! 火縄銃の二刀流!」
信長の赤い宇宙鎧侍は、片手片手に火縄銃を持ち、チャージタイムに邪魔されることなく、連射することが出来た。
「サルめ、火縄銃を2丁を持たすとは、よく考えた。あっぱれだ。」
もしこれをサルが聞いたら泣いて喜んだだろう。
「あと1体! 俺が倒してやる!」
信長は、残り1体、朝比奈元智の機体を探しに行く。
ここは駿府。今川義元のお屋敷。
「殿、氏真さまから、お手紙が届いております。」
「うむ。」
今川の軍師、大原雪斎が大名、今川義元に手紙を渡す。
「なになに、尾張が新型の宇宙鎧侍を開発に成功。3機も宇宙鎧侍を失ったから、援軍を送ってほしいだと!? ムムムムム!? これはどうしたことだ!?」
今川義元は、耳を疑った。尾張如きに息子の氏真が負けたというのだ。本当のようなウソのような話に、義元は戸惑っている。
「若には、松平を護衛に付けているから大丈夫と思いますが、もし殿が心配なら、私が尾張に行って参りましょう。尾張が、どれだけの技術開発力を持っているのか、確かめて参ります。」
今川の大軍師にしてナンバーワンの家臣、太原雪斎、自ら尾張に行くというのだ。
「おお、雪斎が言ってくれるなら心強い。」
「はは。」
尾張が開発した、新型の宇宙鎧侍が、今川の軍師、太原雪斎を動かしてしまった。
ここは宇宙尾張の外壁。宇宙空間である。
「あれが尾張の新型の宇宙鎧侍か!?」
朝比奈元智は、信長が乗る、尾張の新型の赤い宇宙鎧侍を確認した。
「さっきの2機と違う!? 隊長機か!?」
信長も朝比奈元智が乗る、今川のオレンジカラーの宇宙鎧侍を確認した。
「尾張如きが、調子に乗ってるんじゃねえ! くらえ!」
朝比奈元智は、弓を構え信長に照準を合わせ、矢を発射した。
「弓か!?」
信長は弓の矢が向かって来るのを確認した。
「当たれ!」
信長は、1丁の火縄銃を構え、矢に照準合わせ、光エネルギー弾を撃った。
バキューン!
火縄銃の弾は、矢に命中して、矢を溶かした。
「なに!? 矢が溶けただと!?」
朝比奈元智は、初めて見る尾張の新兵器の実力に恐怖した。
「信じられん!? なんという破壊力だ!?」
朝比奈元智は、ただただ戸惑うばかりだった。
「やったぜ! もう1発、当たれ!」
矢に命中させた信長は、機嫌をよくして、もう1丁の火縄銃で朝比奈元智を狙う。
バキューン!
信長が放った火縄銃の弾が朝比奈元智を目掛けて放たれる。
「なめるな!?」
朝比奈元智は、朝比奈のプライドにかけて、火縄銃の弾を反転しながら回避した。
「かわされたのか!?」
信長が火縄銃を撃ち始めて、初めて獲物を逃した。
「私は今川の名門、朝比奈一族だぞ! ひれ伏せ! 織田!」
朝比奈元智を突き動かすのは、今川家の朝比奈という名門の家柄のである。
「それがどうした!? 名前で戦争をしているんじゃないんだ!」
信長は、妹のお市に教えられた。自分は自分のままでと。相手の名前、相手の強さなどはどうすることもできない。気にしても仕方がないと、信長は思っている。
「死ね! 尾張の新型!」
「邪魔する者は、俺が全て斬り捨てる!」
信長と朝比奈元智は、刀を抜き、お互いに突進して、相手の首を狙う。
カッキーン!
刀と刀が交わり、刀から火花が飛び散る。
「俺は、今川の朝比奈だぞ! 命乞いすれば助けてやる!」
「ふざけるな! 誰が命乞いなんかするもんか!」
「尾張のくせに生意気な!」
「俺は尾張の織田信長だ!」
激しい打ち合いが繰り広げられる。
「強い者が弱い者を生かすも殺すも決める権利があるんだ! 尾張の田舎者は、天下の今川家に従っていればいいんだ!」
「強い者が弱い者を自由にできるだと! そんなことはない! 人は生まれながらに自由だ! 他人を自由にする権利は、誰にもない!」
「尾張の若造がきれい事を言いやがって! 抵抗すれば尾張は、今川に滅ぼされて歴史から、その存在を無くすことになるだろう!」
「強者が毎回勝つって、誰が決めた! 弱者が強者を食うことだってあるんだぜ! それを下剋上というんだ! いつまでも尾張をいじめられると思うなよ!」
信長は、朝比奈元智と話をしていて、あまりの上から目線と横暴な発言、強者の今川の名前が無ければ何もできないだろう態度と発言に、信長はキレた。
グイン!
信長の新型の赤い宇宙鎧侍に実装されている、空け者システムが信長の心の感情の高まりに反応した。信長の宇宙鎧侍は全身を赤いオーラが包み、刀の刃の部分も赤く燃え盛るように光っていた。
「も、燃えている!? なんだ!? オーバーヒートしているのか!?」
朝比奈は、信長の宇宙鎧侍が激しい打ち合いに耐えられず、爆発するのかと思った。それは自分の乗る今川の武将クラスの機体の方が、優秀と思っているからだ。
「おまえには分かるまい! 今川の名前をいいことに好き勝手している、おまえにはな!」
「なんだと!?」
「弱者が何度攻められて、苦しめられても、心の炎は消すことはできないんだ!」
信長は、刀を構え朝比奈元智の宇宙鎧侍に突進していく。
「邪魔する者は、俺が全て斬り捨てる!」
信長の赤い刀が炎のように燃えている。
「信長斬る!」
信長は、朝比奈元智の宇宙鎧侍に向かって刀を振り上げ下ろす。
ズバ!
赤い刀は、朝比奈元智の機体を一刀両断した。
「今川家の家臣だぞ!? 朝比奈元智だぞ!? 偉いんだぞ!?」
朝比奈元智は最後の言葉を言う。
ドカーン!
今川のオレンジカラーの宇宙鎧侍は爆発した。
「弱者はいつでも下剋上を狙っているんだよ。」
信長は、戦いに勝利した。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。