第42話戦闘開始
在庫はおよそ一万本。ダンボール40箱分。1箱250本。
一人当たり2箱くらいがノルマということになるが、早めに
売り切れるところも出てくるはずだ。何が起こるかわからない。
それでも、売り切らなければ意味がない。少々売れなくても
ひたすら無事を祈る。さて翌日最終エリア会議を行った。ペア
も一部変更。しっかりものの山男とひょうきんをペアにした。
ボンボンと映画俳優の京都組はあまり売れなくても良いから安全
な所ということで、ハイデルベルク、シュトットガルトから
ザールの西部方面へ。山男とひょうきん組は少し危険だけども
そこそこ売れるフランクフルト近郊からフルダの東部方面へ。
オオツキもじゃもじゃ組は非常に危険だがかなり売れそうな
北部方面へ。車があるのでまさかの時はかなり動ける。
偏屈ペアのオガワイスラエル組はデユッセルを中心に。そして
南部バイエルンをオサムとマメタンとで作りながら売りまくる
ことになった。完璧だ!とにかく無事であってくれと祈るばかり。
各連絡先はそれぞれの中心地のユース、募集の張り紙を出した所だ。
まずは前半2週間の滞在予定で、在庫をユースに置き近郊の町へ身軽
にして売りに行き、2週間後にデュッセルに1度集まるという寸法だ。
取って置きの各都市販売地図を各組に区分けして配った。今までの
データを記し続けてノート1冊分になっていたのをうまく区分けして
皆に配る。さあ出発だ!一生一度の思い出作りに頑張ろう!無事を祈る。
2週間後にこのデュッセルにひとまず全員集合だ。まずはオオツキ
もじゃもじゃ組がカルマンギアで北へ出発。デュッセル組のダンボール
を1個多めにおろし、オガワとイスラエルに見送られてほか全員は
バンに乗り込んだ。さあ南へ出発だ。フランクフルトで山男とひょうきん、
ハイデルベルクでボンボンと映画俳優を下ろす。いよいよ戦闘開始だ!
とにかくうまく立ち回ってくれ。ひたすら全員の無事を祈るのみ。
オサムとマメタンはバイエルンに入った。ローゼンハイム、ケンプテン。
午前中が製作で午後から売りまくる。毎日100本が目標だ。一週間後
ミュンヘンのユースへ行くとデュッセルとハンブルクから手紙が来ていた。
デュッセルのオガワからは売り切れそうなので次は多めに頼みますとのこと。
ハンブルクのオオツキからは喧嘩してもじゃもじゃとは別れたとのことだった。
オオツキには早めにデュッセルにもどれと指示を出して、製作にも力を入れる。
12月10日が集合日だ。12月7日はオサムの27歳の誕生日だった。
南ドイツの片田舎で二人だけの誕生会。チロル生バンドがハッピーバースデイ
と”上を向いて歩こう”を2人のために演奏してくれた。
12月9日の夕方早めに切り上げてアウグスブルクから
アウトバーンに入る。入り口ランプの緩やかなカーブで
日本人らしき若者がヒッチハイクをやっている。
懐かしき今では少ないカーキ色の登山用リュックだ。
背中に『世界広布』と書いてある。
「どこいくの?」
「あ、日本人の方ですか?デュッセルドルフです」
「OK。俺たちもデュッセルや」
ヒッチの会話はいつも決まっている。結局、独協大学の1年生で
着いたばかり、デュッセルドルフに会館があるのでそこに行くという。
「会館て何の会館なの?」
「S教団の会館です。昨日はフランクフルトの会館を訪ねました」
とても元気だ。質問をするととてもうれしそうにはきはきと答える。
「背中に世界広布と書いてあるけどどういう意味?」
と聞くと待ってましたとばかりしゃべりだした。長距離ドライブは
ヒッチハイカーがいろいろとおしゃべりしてあげるのが礼儀だ。
眠気覚ましにちょうど良いのだ。
「ふーん。法華経を世界に広めようって訳?」
「はい、そのとうりです」
「その会館に行けば、日本の本いっぱいある?」
「ええ、いっぱいあります。ぜひおこしください。ユースの近くです」
まだ一度も行ったことがないのにこの青年はもう自分の会館のような口ぶりだ。
夜の10時頃にユースに着いた。確かに会館はすぐ近くだった。
彼を下ろし久しぶりにユースの駐車場で眠る。
よく朝早くどんどんと車をたたく音に眼が覚める。オオツキともじゃもじゃだ。
けんかしている。
「分かった分かったとにかく清算しよう」
それでももじゃもじゃは手取り10万円はあったのだ。残った商品を受け取り
ここでもじゃもじゃはリタイアする。ほどなくオガワとイスラエルが来た。
追加分を含めてほぼ商品は売り切れ。すぐに清算する。なんとふたりとも
各1000ドル(36万円)をこえていた。すごい!オオツキもびっくりして、
「他のとこどこも行ってへんの?」
「ええ、ケルンやハーゲンもよう売れてるらしいんですが、我々2人は
デュッセルだけです」
「ほなわし、明日からそっち行くわ」
そのうちボンボンと映画俳優が現れた。すぐに山男とひょうきんがやってきた。
どちらも好調だ。フルダにはまだ行ってないという。もったいない気もする。
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