第28話何でもありのイスタンブール
日本円で300万円ほどのマルクが残った。
石松も縁日もとにかく無事だった。石松の
真横のアラブ人がいきなり頭を殴られ、重体。
石松は返り血を浴びた。あと一人アラブ人が
ナイフで刺されて重体ということだった。
新聞にはアラブ人と地元のトラブルとだけ報じ
てあった。さあ旅に出るぞ。何もかも忘れて
マメタンと二人で、約束だ。とりあえず、
ドイツを出よう。石松はイスラエルへ、縁日は
スペインへ。別れのスキヤキパーティで醤油が
手に入らなくて水炊き、それもたれなし。
早く旅に出ろということだ。
オリエントエクスプレスにデュッセルの駅から乗る。
オーストリアを抜けるまではまさに定刻どおりに列車
は進んでいたが。ユーゴに入るともう1時間も遅れている。
関係ないところで列車はよく止まる。それでも二人だけと
コンパートメントでとにかく2日間二人ともぐっすりと眠り
続けていた。そしてついに着いたぞトルコ、イスタンブール。
1週間ほど大バザールの近くの安ホテルに泊まって、毎日
シシカバブとガラタ橋のいわしのから揚げなどをほうばり
ながら大バザールを歩き回った。チャイを飲み、毎日5回
のコーランのうめき声を聞きながら・・・・・・。
町中に毎日5回も突然と鳴り響くコーランのスピーカーから
の大声。イスラムはそのたびにその場に立ち止まりメッカに
向かって大地にひざまづき祈りをささげる。これではとても
かなわない。さすが砂漠の宗教だ。骨の髄までイスラムは
染み込んでいる。生活法でもあるのだ。
バザールで大量のパズルリングを買う。
3日間通い詰めてかおなじみになった店だ。
値段は3分の1まで下がった。
大量に買うからとさらに負けさせる。
この日は2階に上げられた。そこは薄暗く、
人間が一人入るくらいの大きな陶器のかめが
たくさん置いてある。中央に古いテーブルが
ひとつあるだけで、奥までびっしりとかめが
置いてある。そのひとつのふたを開けてみた。
組み立てパズルリングがびっしりと詰まっている。
同型同サイズのものだ。こちら側は太い型のもの。
向こう側は女性用の極細型だ。奥にあるのは純度
の高い高級品。手前にあるのは純度の低いシルバー
だ。メッキではないので表面がはがれるということ
はないが、日がたつと変色するが、まあいいか。
4枚組み、6枚組みとあって、一ヶ一ヶやすりで
削ってうまい具合に作り上げるのだ。極細の針金で
ばらけないように縛ってある。
一度ばらけると大変だ。3日間通って組み立て方を
なんども教わったが、なかなかだ。女性用には20
枚組の細いおしゃれなものもある。
我々の狙いどころは純度の低い黄色銀。店の在庫の
大半もこれだ。じっくりと身構えて交渉に入る。
数千個買うということにしたら価格は10分の1に
なった。米ドル即金が効いたのだ。一個10円!
どうみても1000円の品だ。サイズを決めて、
大きなかめから選りすぐる。暗い奥からも持ってくる。
どんどんポケットに入れながらテーブルの上に良い
のを並べていく。1000個といっても小さなダンボール
一個分もないが、重さはずしりと重い。よしオッケーだ。
お金を払って、サンキューべりマッチ。グッドバイ。
足早に店を去る。ヤッケのポケット、上も下もとても重い。
恐らく1000個以上はあるだろう。これって窃盗?
いやいやここは何でもありのイスタンブールであった。
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