日暮さつき

プロローグ



「あたしなぁ、この10年ずっと土の中で眠ってた蝉みたいやったわ」



ダンナと買い物に出た車中で、今はあたしの中ですっかり色を取り戻した空を見上げ、ふと口をついて出た言葉。




鬱というクッソ厄介な病気を患い、通院を始めて10年。

あんなに長く土の中で息をひそめていたような毎日から、まさか昔のようにアホ丸出しのハイテンション野郎な自分を取り戻せる日が来るなんて思ってもなかった。


というより、良くなっていることに確信を持てないでいたし自信も持てずにいた。

どんなに良くなる為の手を尽くしてもどうにもならなかったこのにっくき鬱は『大丈夫だ。もう安心してヨシ!』というものとは全く無縁のものにしか思えてならなかった。



それが、こうして又光の当たるところに出られるとは。



あたしは土の中から這い上がり、羽化をした。

今、空を見上げてまさに羽ばたこうとしている。



しかし、そこに至るまでは本当に壮絶な闘いがあったんだよ。



















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日暮さつき @satsuki_0510

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