風邪っぴき


友達も増え、学校にも大分慣れて楽しく学校に通えるようになった僕ら。


今日もいつものメンバーでガヤガヤ会話して、今現在授業中。


授業ってわかってても、寝たらマズイってわかってても…普通に眠い。


うつらうつらしつつ授業を聞いてたけど、気付いたら爆睡してて…ジークに揺さぶり起こされて目が覚めたら、授業終わっててびっくり。


ガブリエラとジークは凄く笑ってて、僕は欠伸を噛みころしつつも笑う。


いつもの様に、授業間休憩にケルシーの席に行く。


僕が笑えば、ケルシーは笑顔を返してくれて。


普段通り、ケルシーは怪我も脱臼してなくて安心した。


そのまま、ケルシーと軽く会話してたら次の授業。


次は科学で、今回は生物学にあたる授業らしかった。


まぁ、僕は相変わらず寝そうになりながら授業聞いてたんだけど。


授業中がやっと半ばになった時、ケルシーの異変に気付いた。


ケルシーが背を丸めていたから。


隣の席のトロイもすぐに異変に気付いたらしく、僕の方を見てから先生に尋ねた。


「あの…Ms.Darbus、ケルシーが具合悪そうだから…医務室に行かせても良いですか?」


ダーバス先生はケルシーを色々見て、判断したようだった。


「Mr.Bolton、すぐに医務室に連れていってあげなさい」


ダーバス先生の言葉に、トロイは僕に目配せをした。


「あの、Ms.Darbus、僕が彼女…ケルシーを医務室に連れて行きます」


ダーバス先生は少し怪訝な表情はしたものの、了承してくれたので急いで車椅子を押して医務室に行き、優しく靴を脱がせてからゆっくりとベッドに寝かせた。


体温計を借りて熱を測れば、38度9分という高熱だった。


僕はケルシーのサポーターを外してから、急ぎで氷水とタオルを用意して、絞った冷たいタオルをケルシーのおでこに当てた。


「…ん…冷たい…でも、気持ちい…」


ケルシーはそう呟いて目を細めた。


ケルシーは顔は青白いけど、ほっぺが赤くて目が潤んでいる…典型的な発熱の顔だった。


「…いつから、具合悪かった?」


僕が静かに呟けば、ケルシーは熱で潤んだ目で僕を見つめた。


「…朝、から…ちょっと、変だった、の…」


苦しそうに息をするケルシーを見て、僕はゆっくりと頭を撫でた。


「なんで、言わなかった?」


具合悪いのを我慢なんて…しなくて良かったのに。


そう思っていると、ケルシーが呟いた。


「…ジェイソンに、迷惑…かけたく、なかった、の…」


ケルシーはゆっくりと、大きく息を吐き出した。


「…体調不良で苦しむケルシーを見ると、僕まで辛くなるんだ…」


「だから…だから、もう…我慢なんてしないで欲しいな」


そう話したと同時に、何故か涙が溢れた。


慌てて拭ったけど、涙はケルシーのほっぺに落ちてしまった。


ケルシーはそんな僕を見て、つられるように泣き出した。


「ごっ、ごめっ、なさ、ジェイソン…ごめんなさい、ごめんなさいぃ…」


壊れたCDみたいに『ごめんなさい』を繰り返すケルシーを、僕はゆっくりと優しく抱き締めた。


ケルシーは僕にしがみつくように服を握りしめて泣きじゃくった。


泣き止んだ頃には、発熱と泣き疲れで寝落ちしていて。


ケルシーをゆっくりベッドに寝かせ、布団をかけて。


ケルシーが寝ている間に僕は教室に戻り、早退する旨を告げてから2人ぶんの鞄を掴んで医務室に戻った。


医務室に入れば、ケルシーがいつの間にか目を覚ましていて、ベッドの起きた場所に座って僕を探して、大声で呼んでいた。


「ケルシー?」


僕が名前を呼ぶと、ケルシーは僕を見て…慌ててベッドを降りて僕に駆け寄ろうとして、右膝を脱臼した。


床で膝を抱えて泣くケルシーに慌てて駆け寄り、ベッドに寝かせ直して脱臼を元の場所に入れる。


タオルを洗濯機に入れたり、氷水を流したりしに向かおうとしたら、ケルシーに服を掴まれた。


ケルシーを見れば、泣きながら僕の服を掴んでいた。


「っ、ジェイソン、どこにもっ、いかないで…1人、やだぁっ…」


ケルシーは、高熱で頭が回らなくなった所為か…普段からは考えられない程甘えん坊になっていた。


「大丈夫、何処にも行かないよ?」


そういって頭を撫でると、落ち着いたように横になって。


片付けを済ませ、帰宅する為にケルシーを車椅子に座らせて。


急いで帰宅し、ケルシーを抱えてベッドに寝かせる。


そのまま体温計と冷えピタを探しにリビングに行き、二つを持って部屋に戻って、冷えピタをケルシーのおでこにゆっくり貼った。


帰宅した事で安心したのか、ケルシーは気持ち良さそうに眠っていた。


「ふー…ひと段落、かな」


ポツリとそんなことを口にしながら、ケルシーの鞄からサポーターと携帯を、自分の鞄からは携帯を取り出す。


マナーモードを解除した瞬間、テイラーから電話が。


慌ててリビングに行き、チラッと時計を見れば、昼休みの時間帯になっていた。


僕が電話に出れば、テイラーの心配そうな声が聞こえた。


「っあ、ジェイソン!ケルシーは大丈夫!?」


その声の後ろから、ガブリエラやマーサだけじゃなく、チャド達の声も聞こえて。


「ああ、大丈夫だよ…ちなみにケルシーはぐっすり寝てるよ」


僕がゆっくり答えれば、テイラーのホッとしたようなため息が聞こえた。


そっから少しだけ会話して、電話を切ってから部屋に戻ると、ケルシーが目を覚ましていた。


「おはよう、ケルシー…気分はどう?」


僕が尋ねれば、ケルシーは少し笑った。


「学校の時より、ずっと楽になったわ」


ゆっくりとそう答えると、ケルシーは僕の方にゆっくり両手を伸ばした。


「…ケルシー?」


僕は意図がわからなくて、不思議そうな表情になってしまう。


「…ジェイソン、抱っこして?」


手を伸ばしたまま、甘えるような表情で。


僕は少しびっくりしながら、ケルシーをお姫様抱っこで抱き抱えた。


「…ジェイソン、リビング行きたい」


ケルシーに言われるまま、僕はリビングに向かった。

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