ともだち


次の日も、変わらない感じで短時間(1時間〜2時間程)だけバスケに。


紅白のユニフォームに着替えて、紅白試合をするとのこと。


ちなみに、トロイとジークが赤で僕とチャドが白のユニフォームだった。


1試合して、トロイのチームの僅差勝利に終わって。


悔しそうなチャドの肩を軽く叩く。


「次があれば絶対に勝とう、チャド」


なんて話せば、チャドは笑った。


「ったりめーだろ、ジェイソン!次は絶対負けねえぜ!」


両拳を力強く握りしめながら、割と大声なチャド。


ちらっとケルシーの方を見れば、クラスの女の子3人に話しかけられていた。


少し心配になりつつ、2度目の紅白試合。


まさかのまさかで…僕たちのチームが、なんと逆転勝利した。


しかも、僕にパスが来て…試合の残り時間無くて速攻で放った雑なシュートが…偶然にも入ってしまった。


僕以外の赤メンバーは勝利に喜び勇んで、トロイ達白メンバーは悔しそうにそれを見ていた。


練習中、夏場は30分に1度ある(夏以外は1時間に1度らしい)水分補給タイムに入り、僕の終わりの時間になった。


トロイに声をかけ、チャドやジークと笑いつつ、皆とハイタッチや握手なんかをしつつ別れる。


小走りにロッカーに向かい、ざっとシャワーを浴びて雑にタオルで水分を拭いて急いで着替える。


そんな忙しなさのまま、鞄を掴んで肩にかけながらケルシーの元に行く。


ケルシーは僕に気づくと笑顔を向けて、サポーターをつけた手を振ってくれた。


僕は笑顔で手を振ったけど、何だか恥ずかしくて…直ぐに真顔みたいな表情になってしまった。


クラスの女の子達は少しびっくりしていた。


「ジェイソン、あのね…3人共、凄く優しいの!」


嬉しさで目を輝かせ、顔を綻ばせるケルシーにつられるように笑顔になる僕。


ケルシーの手を優しく握りながら、クラスの女の子3人に向き直る。


「えっと…ありがとう、ケルシーに優しくして、お喋りしてくれて」


僕が笑って言えば、女の子達3人も表情を綻ばせた。


「ねえ、貴方とケルシーってどんな関係?彼氏と彼女?」


髪をポニーテールにした、濃い褐色肌の可愛らしい女の子が急にそんなことを言い出した。


ケルシーは僕の方を見てはいるけど目が凄く左右に泳いでるし、顔が赤くなっていた。


僕も多分、びっくりして動揺してるし顔が赤い気がする。


「僕とケルシーは小さい頃からの幼馴染なんだ…あ、正しくはケルシーが5歳頃にこっちに引っ越して来てから、だけどね」


僕が笑って答えると、濃い褐色肌の女の子は納得したように笑顔で頷いた。


「っあ、自己紹介してないまんまだったわ…!」


濃い褐色肌の女の子が思い出したように口に出した。


「あたしはテイラー、テイラー・マッカーシー…科学部所属なの、よろしくね!」


「右の子はガブリエラ、ガブリエラ・モンテスで転校生で科学部に所属する事になって…左の子はマーサ、マーサ・コックスで、科学部所属の秀才なのに凄くダンスが上手なのよ!」


紹介された、右のウェーブのかかった黒髪に白い肌の可愛らしい女の子と左の茶色の髪をふわふわさせた、白い肌のぽっちゃりな女の子が頭を下げた。


「僕はジェイソン、ジェイソン・クロス…ワイルドキャッツのメンバーだよ、よろしくね」


3人と笑って握手を交わし、少し距離が近くなった。


そんな時にある事をふと思い出す僕。


「そうだ、ケルシー…サポーター、そろそろ外す?」


僕が尋ねれば、ケルシーはじっと僕の目を見ながら笑って頷いて。


「…そろそろ、腕が重ダルくなって来てる」


なんて小声で言うケルシーの腕を取りつつ、慎重にサポーターを外していく。


両手のサポーターを外すと、ケルシーの鞄に入れておこうとした時、ガブリエラに尋ねられた。


「そのサポーター、ケルシーはどうしてつけてるの?」


まぁ、至極当然の疑問だよね。


逆の立場なら僕だって聞いちゃうよね…だって、凄く気になるし。


「ケルシーは…関節や皮膚が脆くなるコラーゲンの異常が原因の、まだ治療法の無い難病…エーラスダンロス症候群を患ってるんだ」


「サポーターは、ケルシーの関節…正確にはその繋ぐ力が普通より遥かに脆く、かつ可動域が広くなるから、びっくりするぐらい脱臼し易くて…そんなケルシーの関節が脱臼しないように固定する為につけてるんだ…見た目より割と硬くて重いんだけどね」


話しつつもサポーターをケルシーの鞄に入れて、鞄をサッとしめる。


ガブリエラを見れば、驚きと納得が入り混じった複雑な表情だった。


「エーラスダンロス症候群、聞いたことはあるわ…患者を見たのは初めてだけど」


テイラーが腕を組みながらケルシーを見つめていた。


「私もよ…そうだ、ケルシーはサポーター無しで歩いたりとかは、少しなら出来るの?」


ガブリエラが頷きながら、ケルシーに尋ねた。


ケルシーは、下を向いて俯きながらも答えた。


「多少ならだけど…出来るわ、サポーター無しでも…ただ、手や足を一回、1歩動かすだけで関節の脱臼、亜脱臼の可能性を伴うけれど…」


ケルシーは自分の手や足を見つめていた。


「ケルシーの脱臼し易さは普通の人が思うより、ずっともっと凄いよ」


「電車の揺れでも脱臼する事あるし、座る、立ち上がる、勉強、食事、睡眠…何をするにもどこかしらの脱臼の可能性があるからね」


僕がケルシーの頭を軽く撫でれば、ケルシーはびっくりしたように僕を見て。


「でも、ケルシーは普通の女の子だよ、ごく普通のね」


テイラー、ガブリエラ、マーサが楽しげに笑う。


「ね、ケルシー、ジェイソン!色々話し聞きたいから一緒に帰らない?」


マーサの言葉に僕とケルシーはアイコンタクトで頷き、5人で帰る事になった。

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