竜のなる木
一頭の竜とそのライダーである人間がいた。二人は固い絆で結ばれていた。
そしていつしか一頭と一人はお互いを愛し合うようになった
だか二人は種の差異から交わることは出来ず、二人に子どもができることもない。
そこで二人は一つの魔法を生み出した。
彼らはそれを使い、一つの「木」となる道を選んだ。
八人の弟子と八頭の竜が魔法に力を与えた。エルフ、ドワーフ、オーガ、様々な種族がその魔法のために協力した。そしてそこには「生と死」も居た。
竜は心核を吐き出し人間に託すと、そこへ「死」がやってきて竜の額にふっ、と息を吹きかけた。
巨大な体はみるみる崩れていき、腐りそして土の山となった。竜は木の養分となるため、その「木」を守るため丘を作ったのだ。
その丘の真ん中に人間が寝そべり竜の心核を抱き呪文を唱えた。長く美しくそれは響いた。
「生」がその呪文に形を与えた。
二人はゆっくりと混ざり合い姿を変え一本の「大きな木」となった。竜達は祝福の咆哮を上げた。高らかに高らかに、それは別れを惜しむ慟哭でもある。
二人は消えたわけでも死んだわけでも無い。だが二人はもう居ない。
一つになったのだから。
それを聴いて「木」に変化が起こった。枝先をよく見ると膨らんでいる。それも色鮮やかに。
それは少しず大きくなって行く。弟子たちがその枝先の下に集まった。「生と死」もそれに続いた。枝は弟子たちのところまで下りてくるとそこには両手で抱えられるくらいの大きな実が生っていた。それは竜の卵だった。
弟子の一人が両手を差し出すと卵はパカリと割れ、殻だけがゆりかごの様に手の中に落ちた。
とうの竜はまだ尻尾が枝にくっついてぷらぷらしていた。目をゆっくり開けその美しい瞳で弟子たちを見回した。そしてまたゆっくりと目を閉じぽとりと殻で出来たゆりかごに落ちてそのまま眠ってしまった。
弟子たちはそれを見つめ微笑みあった。竜たちも嬉しそうにその新しく産まれた幼子を見つめた。
「生」が言った 新しい命の始まり、なんと美しい!この者の生きる道に多くの幸いがあるだろう!
「生」が嬉しくて歌い踊ると光の残光がキラキラと辺りを覆って産まれた竜に降り注いだ。
「死」が言った 新しい命の終わりが始まった。愛しい子よ、幸福の数だけ不幸もある、それが生きるということ、だがいつ如何なる時でも私はお前の隣に居る。そして必ず迎えに来る。だから安心してその命を使いなさい。不幸の数だけ幸福もあるのだから。
「死」はゆっくりと産まれた竜に触れようと手を伸ばし少し悩んで手を引いた。
こちらに来た時にしよう。そしてなるべくゆっくり来ておくれ。そしてたくさん話を聞かせておくれ、お前が生きた道の話を・・・。「死」は優しく微笑んだ。
それぞれ祝福を与えると「生」は舞うように天上に昇り「死」はゆっくりと地の底に吸い込まれていった。
竜と人間の願いは叶えられ一つとなり、また新たな一つを産み出した。
この「木」はたくさんの竜を産みたくさんのライダーに我が子を授けた。
「木」のためにたくさんの宝石や鉱石が樹の下に集められた。それを新たな力に様々な色の卵が作られていった。
赤、青、黄、緑、一つとて同じ色の竜は無い。その「木」は今も新たなライダーを待っている。
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