第22話 最終話

いつも屈託なく笑ったり、おどけたりしている笑顔はくしゃくしゃになっていた。



「お、俺、本当に誠さんが好きなんです。初めて付き合った人だからとかじゃない、格好よくて、大人で、優しくて、交換条件とかじゃなく、た、多分、ここで目撃した時から、そういう、恋愛対象として、意識してた、お、俺。」




初めて?意識してた?俺は目を見開いて渡の話を聞いていた。




「だから、だから、この資料庫も、ポストイットも、あのバーも、本当は嫌いだった、馴染めなかった。だって、元カレの事がチラついちゃって、…でももう関係ない。そんな小さな事。僕にとって、一番大切な事は、誠さんと一緒にいる事なんだ、」



そこ迄話終えて、渡は頬を伝った涙を手で拭った。





俺は次の瞬間、渡を抱き締めていた。





「な、なに?」渡が俺の行動に、何を話すのか戸惑ってるのがわかる。こんなに自分を想ってくれてるなんて、思われてるなんて、全然わからなかった。心の奥から、何とも言えない経験した事のない、喜びが沸き上がってくる。



馬鹿だった、俺は、いつも自分から踏み出すのが怖くて、関係性を変えるのが怖かった。条件付きだなんて、馬鹿らしい予防線を引いて、…よっぽど渡の方が大人じゃないか。







「一緒に田舎に帰るか。」





俺はそう言って渡にキスをした。

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僕とあの人の秘密の関係 杏仁豆腐 @Shoko560115

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