第21話

昼休み、資料庫へ向かい、ドアを開けると奥に渡が立っていた。



「誠さんっ!」


「悪い、待たせたか?」


「いえっ」と渡は首を横に振り、そして間髪いれず「それより、辞めるって本当なんですか?親御さんがご病気とか…」とても真剣な顔をしていた。



「ああ、前から調子が悪くてな。でもこれを期に帰って来ないかと言われてさ。」



「じゃあ、僕達は?どうなるんです?」




何も言えなかった。俺が想う渡への気持ちの大きさと、渡が俺を想ってくれる気持ちが等しいとはとても思えなかったからだ。すがって、一緒に来てくれなんてとても言えない。




俺は返答に窮した。何とも言えない、複雑な顔をしていたのだろう。




暫しの沈黙を破ったのは、渡だった。






「お、俺、わ、別れるのは、い、嫌だよっ。」



震える声を聞いて顔を見上げると、渡は泣いていた。

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